疾患の概要
ネフローゼ症候群は、腎臓の糸球体が障害され、多量のタンパク質が尿中に漏れ出すことで生じる症候群です。病態生理としては、糸球体基底膜の透過性亢進により血中のアルブミンが尿中に大量に排泄され(1日3.5g以上)、血中アルブミン値が低下(低アルブミン血症:2.5g/dL以下)します。これにより血漿膠質浸透圧が低下し、血管内の水分が間質へ移動することで全身性の浮腫が出現します。また、肝臓でのリポタンパク質合成亢進と尿中への脂質排泄低下により高脂血症を呈します。原因は、微小変化型ネフローゼ、膜性腎症、巣状分節性糸球体硬化症などの一次性腎疾患によるものと、糖尿病性腎症、アミロイドーシス、膠原病(SLEなど)、薬剤性など二次性のものがあります。主な症状は、全身性浮腫(特に顔面、下肢)、体重増加、乏尿、倦怠感、腹水、胸水などです。合併症として、感染症(免疫グロブリンの喪失)、血栓症(凝固因子の変動)、急性腎障害などが挙げられます。診断には、尿検査(尿タンパク定量、尿沈渣)、血液検査(血清アルブミン、総コレステロール、腎機能)、腎生検が行われます。治療は、原疾患の治療に加え、ステロイドや免疫抑制剤による免疫抑制療法、浮腫に対する利尿薬、高脂血症に対する脂質異常症治療薬、血栓症予防のための抗凝固薬などが用いられます。食事療法では、タンパク制限、塩分制限が重要です。
看護のポイント
ネフローゼ症候群の看護では、全身状態の観察と合併症予防が重要です。浮腫の程度、体重、尿量、血圧、呼吸状態を毎日正確に測定し、変動を把握します。特に浮腫は体位によって移動するため、全身を観察します。感染症のリスクが高いため、発熱、咽頭痛、咳嗽、皮膚の発赤・腫脹などの感染徴候に注意し、手洗いやうがいを徹底するよう指導します。また、血栓症予防のため、下肢の観察(疼痛、腫脹、発赤)を行い、早期離床や弾性ストッキングの使用を促します。食事療法(塩分制限、タンパク質制限)は治療の要であり、患者さんが内容を理解し、実践できるよう具体的に指導します。制限食は食欲不振につながることがあるため、嗜好を考慮し、調理方法を工夫するようアドバイスします。長期臥床による筋力低下や褥瘡予防のため、体位変換やリハビリテーションを支援します。精神的なサポートも重要で、慢性疾患であることへの不安や治療への意欲低下に対し、傾聴し、情報提供を行うことで自己管理能力を高める支援を行います。
アセスメントのポイント
フィジカルアセスメントでは、まず全身の浮腫の程度と部位を詳細に観察します。特に眼瞼、顔面、下肢の圧痕性浮腫の有無、腹囲の増大(腹水)、呼吸困難感の有無(胸水)を確認します。体重は毎日同時刻、同条件で測定し、体液量の変化を把握します。バイタルサインでは、血圧、脈拍、呼吸数、体温を測定し、異常の早期発見に努めます。特に血圧は、腎機能悪化や合併症(高血圧)の指標となります。皮膚の状態は、浮腫による脆弱性や感染リスクを考慮し、発赤、びらん、乾燥、掻痒感、褥瘡の有無を観察します。尿量測定は、体液バランスを評価する上で不可欠です。検査データでは、血液検査で血清アルブミン値(低アルブミン血症の程度)、総コレステロール値(高脂血症の程度)、クレアチニン・BUN(腎機能)、電解質(Na, Kなど)、CRP(炎症・感染の有無)を確認します。尿検査では、尿タンパク定量(24時間蓄尿が望ましい)、尿沈渣(赤血球、白血球、円柱の有無)を評価します。これらのデータと患者の自覚症状を統合し、全身状態と治療効果、合併症の有無をアセスメントします。
関連する看護診断
1. 体液量過剰:低アルブミン血症と腎機能障害による体液貯留のため。
2. 栄養摂取量不足:疾患による食欲不振、制限食、およびタンパク質喪失のため。
3. 感染リスク状態:免疫グロブリンの尿中喪失と免疫抑制剤使用のため。
4. 活動耐性低下:浮腫による倦怠感、筋力低下、全身状態の悪化のため。
5. 治療計画の非効果的自己管理の危険性:慢性疾患の管理、複雑な食事療法、薬剤管理の必要性のため。
看護計画の要約
OP: 浮腫の程度と部位、体重、IN/OUTバランス、バイタルサイン(特に血圧)、呼吸状態、皮膚の状態(発赤、びらん、褥瘡)、感染徴候(発熱、咽頭痛、咳嗽)、下肢の血栓症徴候(疼痛、腫脹、発赤)を観察する。血液検査データ(血清アルブミン、総コレステロール、クレアチニン、BUN、CRP)、尿検査データ(尿タンパク定量、尿沈渣)をモニタリングする。患者の食事摂取状況、食欲、嗜好を把握する。TP: 利尿薬の確実な投与と効果の確認、副作用(電解質異常など)の観察。医師の指示に基づいた食事療法(塩分・タンパク質制限)の提供と摂取状況の記録。清潔ケア(皮膚の保護、口腔ケア)の実施。体位変換、早期離床の促し、必要に応じたリハビリテーションの支援。弾性ストッキングの着用指導と管理。感染予防策(手洗い、うがい、環境整備)の徹底。EP: 疾患の病態、治療の目的、薬剤の作用・副作用について説明し、理解度を確認する。食事療法(塩分・タンパク質制限の重要性、具体的な献立の工夫)について栄養士と連携し指導する。浮腫、体重、尿量の自己測定方法と記録の重要性を指導する。感染予防策、血栓症予防(弾性ストッキング、適度な運動)について指導する。倦怠感や活動制限に対する対処法、精神的なサポートの必要性を説明する。退院後の受診の重要性、日常生活での注意点について指導する。