疾患の概要
膀胱がんは、膀胱の粘膜に発生する悪性腫瘍で、多くは移行上皮癌です。病態生理としては、膀胱内の細胞が異常増殖し、腫瘍を形成します。原因としては、喫煙が最大の危険因子であり、その他、特定の化学物質(芳香族アミンなど)への職業的曝露、慢性膀胱炎、骨盤への放射線治療歴、一部の薬剤(シクロホスファミドなど)の使用などが挙げられます。主な症状は、無症候性肉眼的血尿(痛みを伴わない目で見てわかる血尿)が最も多く、その他、頻尿、排尿時痛、残尿感などの膀胱刺激症状が見られることもあります。進行すると、腰痛や下肢の浮腫、腎機能障害を引き起こすこともあります。検査には、尿細胞診、膀胱鏡検査、CTスキャン、MRI、超音波検査などがあり、確定診断には生検による病理組織検査が必要です。治療は、がんの悪性度や浸潤度によって異なり、内視鏡的切除術(TURBT)が一般的です。筋層非浸潤性膀胱がんでは、TURBT後にBCG膀胱内注入療法や抗がん剤の膀胱内注入療法が行われることがあります。筋層浸潤性膀胱がんでは、膀胱全摘除術(尿路変更術を伴う)や放射線療法、化学療法が選択されます。近年では、免疫チェックポイント阻害剤などの分子標的薬も治療選択肢となっています。
看護のポイント
膀胱がん患者の看護では、まず血尿の有無や性状、排尿回数、排尿時痛などの排尿状況を詳細に観察することが重要です。術後の尿路変更術の種類に応じたストーマケアや、カテーテル管理、自己導尿指導なども重要なケアとなります。疼痛管理も欠かせず、鎮痛薬の効果や副作用を評価し、患者の苦痛緩和に努めます。また、化学療法や放射線療法に伴う副作用(悪心、嘔吐、倦怠感、皮膚炎など)のモニタリングと対処も必要です。患者教育としては、疾患の理解、治療の必要性、術後の生活指導(水分摂取の重要性、ストーマケア、自己導尿手技、感染予防、定期的な受診の必要性)を丁寧に行います。特に、喫煙者に対しては禁煙指導を強く推奨し、再発予防に努めます。精神的なサポートも重要であり、がん告知後の不安やショック、身体イメージの変化に対する心理的支援を提供し、患者が病気と向き合い、治療に前向きに取り組めるよう支援します。
アセスメントのポイント
フィジカルアセスメントでは、まずバイタルサイン(体温、脈拍、呼吸、血圧)の変動を確認します。腹部の視診、触診により、膀胱の膨満感や圧痛、腫瘤の有無を評価します。ストーマ造設患者では、ストーマの色、形、周囲皮膚の状態、排泄物の性状と量を観察します。下肢の浮腫の有無も確認し、腎機能障害の徴候がないか注意します。排尿状況については、排尿回数、排尿量、尿の性状(色、混濁、血尿の有無)、排尿時痛、残尿感の有無を詳細に聴取します。検査データでは、尿検査(尿潜血、尿細胞診)、血液検査(腎機能を示すクレアチニン、BUN、電解質、貧血の有無を示すヘモグロビン、ヘマトクリット)、腫瘍マーカー(NMP22、BTAなど)の値をモニタリングします。画像診断(CT、MRI、超音音波検査)の結果から、腫瘍の大きさ、部位、浸潤度、リンパ節転移や遠隔転移の有無を確認します。これらの情報を統合し、患者の状態を多角的にアセスメントします。
関連する看護診断
1. 疼痛(急性):膀胱刺激症状や手術、治療に伴う身体的苦痛に関連して。
2. 身体イメージの混乱:尿路変更術による身体の変化やストーマ造設に関連して。
3. 感染リスク状態:尿路カテーテル留置、手術、免疫力低下に関連して。
4. 知識不足:疾患、治療、自己管理(ストーマケア、自己導尿)に関する情報不足に関連して。
5. 不安:がんの診断、治療、予後、再発の可能性、生活の変化に関連して。
看護計画の要約
OP:排尿状況(血尿の有無、性状、排尿回数、排尿時痛、残尿感)、バイタルサイン、疼痛の部位・程度・性状、ストーマの状態(色、形、周囲皮膚、排泄物)、手術創の状態、検査データ(尿検査、血液検査、画像診断)、精神状態、治療による副作用(悪心、倦怠感、食欲不振など)を継続的に観察する。TP:鎮痛薬の適切な使用と効果評価、術後の創部ケア、ストーマケアまたはカテーテル管理、清潔ケア、水分出納バランスの管理、感染予防策の実施、安静の確保と早期離床の援助、心理的サポート、治療に伴う副作用への対処。EP:疾患の概要、治療内容、予後に関する情報提供、ストーマケアや自己導尿手技の指導、水分摂取の重要性、感染予防策(手洗い、清潔操作)の指導、禁煙指導、退院後の生活指導(活動制限、食事、定期受診の必要性)、不安やストレスへの対処法、社会資源の紹介。