疾患の概要
急性腎障害(AKI)は、数時間から数日の間に腎機能が急激に低下する病態であり、体内の老廃物や電解質のバランスが崩れることで様々な症状を引き起こします。病態生理としては、腎血流の低下(腎前性AKI)、腎臓そのものの障害(腎性AKI)、尿路閉塞(腎後性AKI)の3つのタイプに分類されます。腎前性AKIは脱水、出血、心不全などによる腎灌流圧の低下が原因で、腎臓自体に器質的損傷がないため、原因除去により可逆的です。腎性AKIは、急性尿細管壊死(ATN)が最も多く、敗血症、虚血、腎毒性薬剤などが原因となります。腎後性AKIは、尿路結石、前立腺肥大症、腫瘍などによる尿路の閉塞が原因です。主な症状は、尿量減少(乏尿・無尿)、浮腫、倦怠感、食欲不振、悪心・嘔吐、呼吸困難(肺水腫)、意識障害などです。検査では、血清クレアチニン値や尿素窒素(BUN)値の急激な上昇、電解質異常(特に高カリウム血症)、尿検査での蛋白尿・血尿・円柱尿、腎臓超音波検査、CTなどで診断します。治療は、原因疾患の治療が最優先され、輸液管理、電解質異常の補正、利尿薬投与、腎代替療法(透析)などが選択されます。早期発見と適切な介入が、腎機能の回復に不可欠です。
看護のポイント
急性腎障害の看護では、腎機能の悪化防止と合併症の管理が重要です。観察項目としては、バイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸数、体温)、尿量と性状(色、混濁、比重)、体重の変動、浮腫の有無と程度、呼吸状態(呼吸困難、喘鳴)、意識レベル、全身倦怠感、食欲不振、悪心・嘔吐の有無、皮膚の状態(乾燥、掻痒感)などを継続的に観察します。特に、尿量減少や体重増加は体液貯留のサインであり、呼吸困難は肺水腫の兆候であるため注意が必要です。ケアの実際では、厳密な水分出納バランスの管理(in-outバランス)、電解質異常に対する食事指導や薬剤管理、皮膚の清潔保持と保湿による掻痒感の緩和、安静の保持、感染予防のための手洗い・マスク着用、口腔ケアなどが挙げられます。患者教育としては、疾患の理解、治療の必要性、食事制限(塩分、カリウム、リン、水分制限)、服薬管理の重要性、症状悪化時の対応(受診の目安)などを分かりやすく説明し、不安の軽減と自己管理能力の向上を支援します。
アセスメントのポイント
急性腎障害のアセスメントでは、全身状態と腎機能の評価が中心となります。フィジカルアセスメントでは、まず意識レベルを確認し、精神状態の変化がないか観察します。バイタルサインでは、血圧の上昇(体液過剰)、脈拍の不整(高カリウム血症)、呼吸数の増加(アシドーシス、肺水腫)に注意します。全身の浮腫の有無と程度(顔面、眼瞼、下肢の圧痕性浮腫)を評価し、体重の急激な増加がないか確認します。呼吸音を聴診し、ラ音や水泡音があれば肺水腫を疑います。腹部を触診し、膀胱の膨満がないか確認することで、腎後性AKIの可能性を探ります。検査データでは、血清クレアチニン値とBUN値の推移を追跡し、腎機能の悪化速度を評価します。電解質(K、Na、Cl、Ca、P)の異常値、特に高カリウム血症は致死的な不整脈につながるため、緊急性を要します。動脈血ガス分析で代謝性アシドーシスの有無と程度を確認します。尿検査では、尿量、尿比重、尿蛋白、尿潜血、尿沈渣(円柱、細胞)などを確認し、腎障害のタイプを推測します。画像検査(腎臓超音波、CT)の結果から、腎臓の形態異常や尿路閉塞の有無を確認します。
関連する看護診断
1. 体液量過剰:腎機能の低下による水分・ナトリウム排泄障害に関連した。2. 栄養摂取量不足:悪心、食欲不振、食事制限に関連した。3. 活動耐性低下:全身倦怠感、貧血、体液量過剰に関連した。4. 感染リスク状態:免疫機能低下、侵襲的処置、尿毒症状態に関連した。5. 不安:疾患の予後、治療内容、生活の変化に関連した。
看護計画の要約
OP(観察計画):バイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸数、体温)を4時間ごとに測定し、特に血圧上昇や不整脈の有無を観察する。尿量、尿比重、in-outバランスを厳密に記録し、尿量減少や体重増加に注意する。全身の浮腫の有無と程度を毎日評価する。呼吸状態(呼吸困難、ラ音)や意識レベルの変化を観察する。悪心、嘔吐、食欲不振、全身倦怠感、皮膚掻痒感の有無と程度をアセスメントする。血液検査データ(クレアチニン、BUN、電解質、Hb)の推移を追跡する。TP(治療計画):医師の指示に基づき、厳密な水分制限、塩分・カリウム・リン制限食を提供する。利尿薬や電解質補正薬を正確に投与し、効果と副作用を観察する。必要に応じて腎代替療法(透析)の準備と介助を行う。皮膚の清潔保持と保湿を行い、掻痒感の緩和に努める。感染予防のため、手洗い、マスク着用、清潔操作を徹底する。安静を保持し、転倒予防に配慮する。EP(教育計画):疾患の病態、治療の目的と必要性について、患者と家族に分かりやすく説明する。食事制限(水分、塩分、カリウム、リン)の重要性と具体的な方法を指導する。内服薬の正しい服用方法と副作用について説明する。症状悪化時の兆候(尿量減少、浮腫の増強、呼吸困難など)と、その際の対処法(受診の目安)を指導する。透析導入の可能性がある場合は、透析の種類や生活への影響について情報提供し、不安の軽減を図る。