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実習対策2026/02/187分で読める

バイタルサイン測定の基本と観察ポイント:実習で見落としがちな異常値の読み方

バイタルサインとは

バイタルサイン(vital signs)は、生命の徴候を示す基本的な指標であり、体温(BT)脈拍(P)呼吸(R)、**血圧(BP)の4つを指します。近年では経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)**を加えた5項目を測定することが標準となっています。

看護実習において、バイタルサイン測定は毎日行う最も基本的な看護技術です。しかし、単に数値を記録するだけでなく、その数値が何を意味しているのかを理解し、患者の状態変化を早期に察知することが求められます。

各バイタルサインの基準値と観察ポイント

体温(BT:Body Temperature)

基準値: 36.0〜37.0℃(腋窩温)

体温測定で重要なのは、単回の数値ではなく経時的な変動パターンです。術後患者であれば、術後24〜48時間の吸収熱(37℃台前半)は生理的反応ですが、術後3日目以降の38℃以上の発熱は感染の兆候として注意が必要です。

観察ポイント:

  • 発熱時の随伴症状(悪寒、発汗、倦怠感)
  • 解熱剤使用後の体温の推移
  • 日内変動のパターン(朝低く夕方高いのが正常)
  • 高齢者は基礎体温が低いため、37.5℃でも相対的に高熱の可能性

脈拍(P:Pulse)

基準値: 60〜100回/分(成人)

脈拍は回数だけでなく、**リズム(整・不整)緊張度(強・弱)**も観察します。不整脈がある場合は、橈骨動脈で1分間しっかり測定し、心尖部聴診との差(脈拍欠損)も確認しましょう。

観察ポイント:

  • 頻脈(100回/分以上):発熱、脱水、疼痛、不安、出血の可能性
  • 徐脈(60回/分以下):ジギタリス製剤の副作用、甲状腺機能低下
  • 脈の左右差:動脈硬化や血管閉塞の可能性
  • 脈拍と体温の関係:体温1℃上昇で脈拍約10回/分増加が目安

呼吸(R:Respiration)

基準値: 12〜20回/分(成人)

呼吸は患者に意識させると変化するため、脈拍測定に続けて、患者に気づかれないように測定するのがコツです。回数だけでなく、呼吸の深さ、リズム、呼吸音、呼吸パターンも観察します。

観察ポイント:

  • 頻呼吸(25回/分以上):発熱、疼痛、肺炎、心不全の可能性
  • 努力呼吸の有無:肩呼吸、鼻翼呼吸、陥没呼吸
  • 呼吸音の左右差:気胸、胸水、無気肺の可能性
  • チェーンストークス呼吸:脳血管障害、心不全の重症化

血圧(BP:Blood Pressure)

基準値: 収縮期120mmHg未満 / 拡張期80mmHg未満(至適血圧)

血圧測定では、マンシェットの幅と巻き方が測定精度に大きく影響します。上腕周囲の40%の幅のマンシェットを使用し、ゴム嚢の中央が上腕動脈の上に来るように巻きましょう。

観察ポイント:

  • 起立性低血圧:臥位→座位→立位で収縮期20mmHg以上の低下
  • 脈圧(収縮期−拡張期):正常は30〜50mmHg、拡大は動脈硬化の可能性
  • 左右差:10mmHg以上の差は血管病変の可能性
  • 測定前の安静時間:最低5分間の安静後に測定

SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)

基準値: 96〜99%

パルスオキシメーターは簡便ですが、測定値に影響する因子を理解しておく必要があります。マニキュア、末梢循環不全、体動、一酸化炭素中毒などで正確な値が得られないことがあります。

観察ポイント:

  • 90%以下は呼吸不全の基準(緊急対応が必要)
  • COPD患者は88〜92%が目標値の場合がある(高濃度酸素投与でCO2ナルコーシスのリスク)
  • 測定部位の末梢循環状態(冷感、チアノーゼ)を確認
  • 波形の安定性を確認(不安定な場合は測定値の信頼性が低い)

実習で差がつく観察の視点

1. トレンドで捉える

1回の測定値だけで判断するのではなく、前日・前々日からの推移を確認しましょう。「昨日より体温が0.5℃上昇し、脈拍も10回/分増加している」という報告は、「体温37.5℃です」よりもはるかに臨床的価値があります。

2. バイタルサイン同士の関連を考える

体温上昇→脈拍増加→呼吸数増加という連動は生理的反応ですが、体温は正常なのに脈拍だけが増加している場合は、出血や脱水など別の原因を疑う必要があります。

3. 患者の訴えとバイタルサインの一致・不一致

「痛くない」と言っているのに脈拍が上昇している、「大丈夫」と言っているのに血圧が低下している、といった主観と客観の不一致は、重要な臨床情報です。

まとめ

バイタルサイン測定は、数値を正確に測ることはもちろん、その数値が持つ臨床的意味を理解し、患者の状態変化を早期に察知するための重要なスキルです。実習では、測定値をトレンドで捉え、バイタルサイン同士の関連を考察する習慣をつけましょう。