実習前の情報収集完全マニュアル:効率的なカルテの読み方と整理術
なぜ情報収集が重要なのか
看護実習における情報収集は、看護過程の第一段階であり、その後のアセスメント、看護診断、計画立案の全てに影響する最も重要なステップです。情報収集が不十分だと、的外れなアセスメントになり、結果として適切な看護計画を立てることができません。
実習初日は特に緊張しますが、「何を」「どこから」「どのように」収集するかを事前に整理しておくことで、限られた時間を有効に使うことができます。
情報収集の3つのソース
1. カルテ(診療録)からの情報
カルテは最も重要な情報源です。以下の順序で確認すると効率的です。
入院時情報(アナムネーゼ):
- 主訴と現病歴(いつから、どのような症状で入院したか)
- 既往歴(過去の疾患、手術歴、アレルギー歴)
- 家族歴(遺伝性疾患、家族構成)
- 生活歴(職業、喫煙・飲酒歴、運動習慣)
- ADL(入院前の日常生活自立度)
- キーパーソンと家族の支援体制
医師記録:
- 入院時診断名と治療方針
- 手術記録(術式、術中所見、出血量)
- 経過記録(治療の変更点、病状の推移)
看護記録:
- 入院時看護アセスメント
- 看護問題リストと看護計画
- 経過記録(日々の状態変化、ケアの実施と反応)
- 温度板(バイタルサインの推移、IN/OUTバランス)
検査データ:
- 血液検査(CBC、生化学、凝固系)
- 画像検査(X線、CT、MRIの結果)
- その他の検査(心電図、肺機能検査など)
2. 患者本人からの情報
直接患者と話すことで得られる情報は、カルテだけでは把握できない貴重なデータです。
- 現在の自覚症状(痛み、不安、困っていること)
- 疾患や治療に対する理解度
- 入院生活での困りごと
- 退院後の生活に対する希望や不安
- セルフケア能力の実際
3. 看護師・多職種からの情報
受け持ち看護師や他の医療スタッフから得られる情報も重要です。
- 現在の看護上の問題点と優先事項
- 患者の性格や対応上の注意点
- リハビリの進捗状況
- 退院支援の方向性
効率的な情報整理の方法
ゴードンの11の機能的健康パターン
情報を整理する枠組みとして、ゴードンの11の機能的健康パターンが広く使われています。
- 健康知覚−健康管理パターン:健康に対する認識、受診行動、服薬管理
- 栄養−代謝パターン:食事摂取量、体重変化、皮膚の状態、検査データ
- 排泄パターン:排尿・排便の回数、性状、困難感
- 活動−運動パターン:ADL、運動機能、呼吸・循環機能
- 睡眠−休息パターン:睡眠時間、睡眠の質、休息の取り方
- 認知−知覚パターン:意識レベル、感覚機能、疼痛、認知機能
- 自己知覚−自己概念パターン:自己イメージ、ボディイメージ、感情状態
- 役割−関係パターン:家族関係、社会的役割、コミュニケーション
- セクシュアリティ−生殖パターン:性に関する問題、月経、妊娠
- コーピング−ストレス耐性パターン:ストレス対処法、サポートシステム
- 価値−信念パターン:宗教、価値観、治療に対する信念
情報収集シートの活用
実習前に、上記のパターンに沿った情報収集シートを作成しておくと、カルテを読む際に漏れなく情報を拾うことができます。各パターンに対して「S(主観的データ)」と「O(客観的データ)」の欄を設けておくと、そのままアセスメントに活用できます。
実習初日のタイムスケジュール例
カルテ閲覧(30〜40分): 最初の15分で入院時情報と医師記録を確認し、疾患の全体像を把握します。次の15分で看護記録と検査データを確認し、現在の状態を理解します。残りの時間で温度板を確認し、バイタルサインの推移を把握します。
患者との面談(15〜20分): 自己紹介の後、現在の体調や困りごとを聞きます。初日は信頼関係の構築が最優先なので、質問攻めにせず、患者のペースに合わせましょう。
情報の整理(20〜30分): 収集した情報をゴードンの枠組みに沿って整理し、不足している情報を明確にします。翌日以降に追加で収集すべき項目をリストアップしましょう。
よくある失敗と対策
情報の取捨選択ができない: カルテの全てを書き写そうとして時間が足りなくなるケースです。まず疾患名と治療方針を把握し、それに関連する情報を優先的に収集しましょう。
検査データの意味がわからない: 事前に受け持ち患者の疾患に関連する検査項目と基準値を調べておきましょう。全ての検査値を覚える必要はありません。
患者との会話が続かない: オープンクエスチョン(「今日の調子はいかがですか?」)から始め、患者の返答に対して掘り下げていく形式が効果的です。
まとめ
情報収集は看護過程の土台です。事前準備をしっかり行い、カルテ→患者→スタッフの順に効率的に情報を集めましょう。完璧を求めず、実習期間を通じて徐々に情報を充実させていく姿勢が大切です。