臨床報告の基本:SBAR法を使った効果的な申し送りの方法
SBAR法とは
SBAR(エスバー)は、医療現場における情報伝達を標準化するためのコミュニケーションツールです。もともとはアメリカ海軍の潜水艦乗組員間のコミュニケーション手法として開発され、その後、医療安全の向上を目的として医療分野に導入されました。
SBARは以下の4つの要素で構成されています。
- S(Situation:状況):今何が起きているか
- B(Background:背景):患者の臨床的な背景情報
- A(Assessment:評価):問題は何だと考えるか
- R(Recommendation:提案):どうしてほしいか
なぜSBAR法が重要なのか
医療現場では、情報伝達の不備が医療事故の大きな原因の一つとされています。特に、申し送りや緊急時の報告では、必要な情報を漏れなく、簡潔に伝えることが求められます。
SBAR法を使うことで、以下のメリットがあります。
- 情報の構造化:伝えるべき内容が明確になり、漏れを防げる
- 簡潔さ:要点を絞って報告できるため、相手の時間を無駄にしない
- 共通言語:チーム全体で同じフレームワークを使うことで、理解のずれを減らせる
実践例:術後患者の状態変化を報告する
状況設定
術後1日目の患者(70歳男性、胃切除術後)のバイタルサインに変化が見られた場合を想定します。
SBAR報告の例
S(状況): 「○○号室の△△さんについてご報告します。術後1日目ですが、先ほどのバイタル測定で体温が38.5℃に上昇しています。」
B(背景): 「△△さんは昨日、胃がんに対する幽門側胃切除術を受けられました。術中の出血量は少量で、術後の経過は順調でした。今朝までの体温は37.0℃前後で推移していました。」
A(評価): 「術後1日目での38.5℃の発熱は、術後感染の初期兆候の可能性があると考えます。創部に明らかな発赤や腫脹は認めませんが、ドレーンからの排液がやや混濁しているように見えます。」
R(提案): 「血液検査(WBC、CRP)のオーダーと、創部およびドレーン排液の確認をお願いできますでしょうか。また、解熱剤の使用についてもご指示をいただけると助かります。」
看護学生がSBAR法を使うときのポイント
1. 事前準備をしっかり行う
報告の前に、患者のカルテを確認し、必要な情報をメモしておきましょう。特にバイタルサインの推移、投薬内容、直近の検査結果は必ず把握しておくべき情報です。
2. 「A(評価)」を恐れない
学生にとって最も難しいのが「A(評価)」です。「自分の判断が間違っていたらどうしよう」と不安になりがちですが、「〜の可能性があると考えます」「〜が懸念されます」という表現を使えば、断定を避けながら自分の考えを伝えることができます。
3. 「R(提案)」は具体的に
「どうすればよいでしょうか」と丸投げするのではなく、「〜をお願いできますでしょうか」と具体的な提案をすることが大切です。たとえ提案が的外れであっても、自分で考えた上で報告する姿勢が評価されます。
4. 練習を重ねる
SBAR法は、練習を重ねることで自然に使えるようになります。実習前にシミュレーションを行い、友人同士でロールプレイをすることをお勧めします。
カンファレンスでの活用
SBAR法は、申し送りだけでなく、カンファレンスでの症例発表にも活用できます。カンファレンスでは、SBARの各要素をより詳細に展開し、ディスカッションのポイントを明確にすることで、有意義な議論につなげることができます。
まとめ
SBAR法は、看護学生が臨床報告のスキルを身につけるための強力なツールです。最初は緊張するかもしれませんが、型に沿って報告することで、必要な情報を漏れなく伝えられるようになります。ナースハブの報告テンプレ作成ツールを活用して、SBAR形式の報告に慣れていきましょう。