疾患の概要
皮膚がんは、皮膚を構成する細胞が異常に増殖することで発生する悪性腫瘍の総称です。主な種類として、基底細胞がん、有棘細胞がん、悪性黒色腫(メラノーマ)があります。病態生理としては、紫外線への過剰な曝露、慢性的な炎症や刺激、遺伝的要因、免疫抑制状態などが細胞のDNA損傷を引き起こし、がん化を促進すると考えられています。基底細胞がんは最も頻度が高く、顔面によく発生し、転移は稀です。有棘細胞がんは日光角化症などから発生することもあり、転移の可能性があります。悪性黒色腫はメラニン色素を産生する細胞から発生し、進行が早く転移しやすい悪性度の高いがんです。主な症状は、皮膚の異常なできもの、色調の変化(黒色、褐色、赤色など)、形や大きさの変化、出血、かゆみ、痛み、潰瘍形成などです。特に、既存のほくろの変化(左右非対称、境界不規則、色むら、直径6mm以上、隆起・拡大)は悪性黒色腫の徴候(ABCDEルール)として重要です。診断には、視診、ダーモスコピー検査、生検(組織検査)が不可欠です。生検によって確定診断とがんの種類、深達度などを評価します。治療は、がんの種類、病期、患者さんの全身状態によって異なりますが、外科的切除が基本となります。早期発見・早期治療が予後を大きく左右します。進行例では、放射線療法、化学療法、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などが用いられることもあります。
看護のポイント
皮膚がん患者への看護は、身体的側面だけでなく精神的側面への配慮が重要です。観察項目としては、まず病変部の状態(大きさ、形、色、境界、表面性状、出血・浸出液の有無、潰瘍形成の有無、周囲皮膚との関係、臭気)を詳細に観察します。また、リンパ節の腫脹の有無、全身倦怠感、体重減少、食欲不振など、全身状態の変化にも注意を払います。治療の実際としては、手術前後の管理が中心となります。術前は、患者さんの不安軽減に努め、手術内容や術後の経過について説明し、理解を促します。術後は、創部の清潔保持と感染徴候(発赤、腫脹、熱感、疼痛、膿性分泌物)の早期発見、疼痛管理を行います。必要に応じてドレーン管理や皮膚移植部のケアも実施します。患者教育では、紫外線対策の重要性を強調し、日焼け止めの適切な使用方法、日傘や帽子の活用、日中の外出を避けるなどの指導を行います。自己検診の方法(ABCDEルールなど)を具体的に説明し、定期的な皮膚の観察を促します。また、治療の副作用(化学療法や放射線療法の場合)や、再発・転移の可能性についても情報提供し、精神的サポートを行います。社会資源の活用や、がん相談支援センターの紹介も検討します。
アセスメントのポイント
フィジカルアセスメントでは、まず全身の皮膚を詳細に観察します。特に日光曝露部位(顔、首、手背、腕、足など)は注意深く確認します。病変部の大きさ、形、色、境界の明瞭さ、表面の性状(隆起、潰瘍、痂皮、鱗屑など)、出血や浸出液の有無、触診による硬さや可動性を評価します。悪性黒色腫の疑いがある場合は、ABCDEルール(Asymmetry:非対称性、Border irregularity:境界不規則、Color variation:色調変化、Diameter:直径6mm以上、Evolving:変化)に基づき評価します。また、所属リンパ節の腫脹や圧痛の有無を確認し、転移の可能性を評価します。全身状態の評価として、体重、食欲、倦怠感、疼痛の有無と程度、発熱の有無も確認します。検査データとしては、生検による病理組織診断の結果(がんの種類、深達度、悪性度、断端陰性か陽性か)を把握します。画像検査(CT、MRI、PETなど)の結果から、リンパ節転移や遠隔転移の有無を確認します。血液検査では、貧血の有無、肝機能・腎機能、腫瘍マーカー(S-100B蛋白、LDHなど、悪性黒色腫の場合)の変動をモニタリングします。
関連する看護診断
1. 身体イメージの混乱: がんの診断、手術による外見の変化、再発・転移への不安に関連した。2. 疼痛: 疾患の進行、外科的切除、治療の副作用に関連した。3. 感染リスク状態: 手術創、免疫抑制状態、皮膚バリア機能の障害に関連した。4. 知識不足: 疾患の病態、治療、自己管理、予後に関する情報不足に関連した。5. 不安: がんの診断、治療、予後、再発・転移への恐怖に関連した。
看護計画の要約
OP (観察計画): 病変部の状態(大きさ、形、色、境界、表面性状、出血、潰瘍、臭気)を毎日観察する。所属リンパ節の腫脹の有無を定期的に確認する。疼痛の有無と程度、性質を評価する。全身倦怠感、食欲不振、体重減少など全身状態の変化をモニタリングする。治療による副作用(皮膚炎、脱毛、悪心嘔吐など)の有無と程度を観察する。患者の不安や精神状態を評価する。TP (援助計画): 疼痛コントロールのため、医師の指示に基づき鎮痛剤を適切に投与し、効果を評価する。手術創の清潔保持、ドレッシング材の交換、感染徴候の早期発見に努める。皮膚移植部がある場合は、生着状況の観察と適切なケアを行う。患者の不安軽減のため、傾聴し、共感的な態度で接する。必要に応じて心理的サポートを提供する。治療計画や予後に関する情報提供を医師と連携して行う。EP (教育計画): 紫外線対策の重要性と具体的な方法(日焼け止め、帽子、日傘、日中の外出回避)を指導する。自己検診の方法(ABCDEルール)を具体的に説明し、定期的な皮膚の観察を促す。手術創のセルフケア方法、感染徴候、受診の目安を指導する。治療の副作用と対処法について説明する。再発・転移の可能性について説明し、定期的な受診の重要性を強調する。がん相談支援センターなど、利用可能な社会資源について情報提供する。