疾患の概要
肺結核は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)によって引き起こされる感染症で、主に肺に病変を形成します。結核菌を含む飛沫核を吸入することで感染し、感染後すぐに発症する「一次結核」と、体内に潜伏していた菌が免疫力の低下などにより活動を再開する「二次結核(再燃結核)」があります。病態生理としては、吸入された結核菌が肺胞マクロファージに貪食されますが、菌はマクロファージ内で増殖し、炎症反応を引き起こします。これにより、乾酪壊死を伴う肉芽腫(結核結節)が形成されます。主な症状は、2週間以上続く咳、痰、微熱、倦怠感、食欲不振、体重減少、寝汗などです。重症化すると血痰や喀血が見られることもあります。診断には、胸部X線検査やCT検査で肺病変を確認し、喀痰塗抹検査や培養検査で結核菌を検出することが重要です。IGRA(インターフェロンγ遊離試験)やツベルクリン反応検査は感染の有無を評価します。治療は、複数の抗結核薬を併用する多剤併用療法が基本で、通常6ヶ月以上の長期にわたります。薬剤耐性菌の出現を防ぐため、服薬アドヒアランスの確保が極めて重要です。
看護のポイント
肺結核患者の看護では、感染拡大の防止と治療の完遂が二つの大きな柱となります。感染防止のため、入院中は個室管理や陰圧室の利用、N95マスクの着用指導、適切な換気を行います。患者には咳エチケットの徹底を指導し、喀痰処理の注意点も伝えます。治療においては、長期にわたる多剤併用療法に対する服薬アドヒアランスの維持が最も重要です。副作用の早期発見と対処のため、薬剤の種類と副作用について患者に説明し、体調変化の訴えを傾聴します。食欲不振や吐き気などの消化器症状、肝機能障害、視力障害、聴力障害、末梢神経障害などに注意が必要です。栄養状態の維持も重要であり、食欲不振がある場合は食事内容の工夫や栄養補助食品の活用を検討します。また、精神的なサポートも不可欠です。長期治療による不安や社会的な偏見、隔離による孤独感などに対し、傾聴や情報提供を通じて精神的負担の軽減を図ります。退院後もDOTS(直接服薬確認療法)などによる服薬支援や、社会資源の活用を促し、治療中断を防ぎます。
アセスメントのポイント
フィジカルアセスメントでは、まず呼吸状態の観察が重要です。呼吸回数、呼吸様式、努力呼吸の有無、チアノーゼの有無を確認します。聴診では、湿性ラ音や乾性ラ音、気管支呼吸音の異常の有無を評価します。全身状態としては、発熱の有無とパターン、倦怠感の程度、食欲不振や体重減少の有無、寝汗の有無を詳細に問診します。また、咳の性状(乾性か湿性か、痰の量や性状、血痰の有無)も重要な情報です。検査データでは、炎症反応を示すCRP値や白血球数、赤沈値の上昇に注目します。肝機能障害の有無を確認するため、AST、ALT、γ-GTPなどの肝酵素値を定期的にモニタリングします。腎機能障害の指標としてクレアチニン値やBUN値も確認します。喀痰検査では、抗酸菌塗抹検査の陽性・陰性、培養検査での菌の検出、薬剤感受性検査の結果を確認し、治療効果や薬剤選択の参考にします。胸部X線やCT画像では、浸潤影、空洞、結節影などの病変の広がりや変化を評価します。
関連する看護診断
[感染伝播のリスク] 結核菌の存在と飛沫感染の可能性に関連した
[非効果的気道浄化] 喀痰の増加と咳嗽反射の低下に関連した
[活動耐性低下] 呼吸困難、全身倦怠感、栄養状態の悪化に関連した
[服薬アドヒアランス不良のリスク] 長期にわたる多剤併用療法と副作用の出現に関連した
[栄養摂取量不足] 食欲不振、悪心、嘔吐、代謝亢進に関連した
看護計画の要約
OP: 呼吸状態(呼吸回数、努力呼吸、SpO2、呼吸音)を観察する。咳、痰の性状・量、血痰の有無を観察する。体温、脈拍、血圧、倦怠感、食欲、体重、寝汗の有無を観察する。抗結核薬の副作用(発疹、黄疸、視力・聴力障害、しびれなど)の有無を観察する。喀痰検査結果(塗抹、培養、薬剤感受性)および胸部X線・CT画像を定期的に確認する。肝機能・腎機能検査値、炎症マーカー(CRP、白血球)をモニタリングする。TP: 感染拡大防止のため、個室管理、換気、N95マスク着用、咳エチケット、喀痰処理の指導を徹底する。医師の指示に基づき抗結核薬を正確に与薬し、服薬確認を行う。副作用出現時は医師に報告し、症状緩和に努める。栄養状態維持のため、食事内容の工夫や栄養補助食品の提案を行う。呼吸困難時は体位変換や酸素療法を検討する。精神的サポートとして、傾聴し不安の軽減を図る。EP: 疾患の概要、感染経路、治療の必要性、服薬の重要性、副作用について説明する。咳エチケット、喀痰処理、手洗いの方法を指導する。退院後の服薬継続の重要性、DOTSなどの服薬支援体制、定期受診の必要性を説明する。栄養バランスの取れた食事の重要性を指導する。症状悪化時の受診基準を説明する。