疾患の概要
褥瘡は、身体の一部が長時間にわたり圧迫され、血流が阻害されることで組織が壊死する状態を指します。特に骨突出部(仙骨部、踵骨部、大転子部など)に好発します。病態生理としては、持続的な圧迫により毛細血管が閉塞し、組織への酸素や栄養供給が途絶えることで虚血状態となり、細胞が壊死に至ります。せん断力(皮膚と深部組織が異なる方向にずれる力)や摩擦力も褥瘡発生の重要な要因です。主な原因は、寝たきりや車椅子での座位などによる体位変換不足、低栄養状態、浮腫、失禁による皮膚湿潤、加齢による皮膚脆弱性、循環器疾患などです。症状は段階的に進行し、初期には皮膚の発赤(圧迫解除後も消退しない)、水疱形成が見られ、進行すると真皮、皮下組織、筋肉、骨へと組織欠損が深くなります。深達度分類(DESIGN-R分類など)を用いて評価されます。検査は主に視診と触診による患部の評価、深達度分類、ポケットの有無、滲出液の量と性状、壊死組織の有無、周囲皮膚の状態などです。感染が疑われる場合は細菌培養検査を行います。治療は、局所療法と全身療法に大別されます。局所療法では、壊死組織の除去(デブリードマン)、適切な創傷被覆材の選択と貼付、感染コントロール(抗菌薬の使用)、滲出液の管理などが行われます。全身療法としては、栄養状態の改善(高タンパク食、栄養補助食品)、全身状態の管理、体位変換による除圧、リハビリテーションなどが重要です。
看護のポイント
褥瘡の看護では、発生予防と早期発見、そして適切な治療的ケアが重要です。観察項目としては、皮膚の状態(発赤、水疱、びらん、潰瘍の有無、深さ、大きさ、色調、滲出液の量と性状、壊死組織の有無)、疼痛の有無と程度、全身状態(栄養状態、発熱、意識レベル)、体位変換の頻度と方法、失禁の有無と皮膚への影響などを継続的に評価します。ケアの実際では、まず除圧が最も重要です。体圧分散寝具の活用、2時間ごとの体位変換(座位の場合は15〜30分ごと)、ポジショニングによる骨突出部の保護を行います。皮膚の清潔保持と保湿も不可欠で、排泄後は速やかに清拭し、乾燥を防ぐために保湿剤を使用します。栄養状態の改善のため、医師や管理栄養士と連携し、高タンパク・高カロリー食の提供や経口栄養補助食品の活用を促します。患者教育では、褥瘡発生のメカニズム、予防の重要性、体位変換の必要性、皮膚の観察方法、栄養摂取の重要性などを患者本人や家族に分かりやすく説明します。早期発見のためのセルフチェック方法や、異常時の連絡先なども伝達します。入院中の患者だけでなく、退院後の在宅でのケアについても指導することで、再発予防に繋げます。
アセスメントのポイント
褥瘡のアセスメントでは、まずフィジカルアセスメントとして、全身の皮膚状態を詳細に観察します。特に骨突出部(仙骨部、踵骨部、大転子部、後頭部、肩甲骨部など)に注意し、発赤の有無、圧迫解除後の消退の有無を確認します。発赤が消退しない場合は褥瘡の初期段階である可能性があります。潰瘍がある場合は、その深さ(DESIGN-R分類などのツールを用いて評価)、大きさ(長径と短径)、形状、辺縁の状態、ポケットの有無、滲出液の量と性状(漿液性、膿性、血性など)、壊死組織の有無と種類(黒色壊死、黄色壊死など)、肉芽組織や上皮化の状況を評価します。周囲皮膚の発赤、熱感、腫脹、疼痛の有無も確認し、感染の兆候を見逃さないようにします。また、全身状態として、意識レベル、活動性、栄養状態(体重、BMI、血清アルブミン値など)、浮腫の有無、発熱の有無、排泄状況(失禁の有無)などを総合的に評価します。検査データとしては、血清アルブミン値、総タンパク、ヘモグロビン値、リンパ球数など、栄養状態を示す指標を確認します。炎症反応を示すCRPや白血球数も、感染の有無を判断する上で重要です。必要に応じて細菌培養検査の結果も確認し、適切な抗菌薬治療の選択に役立てます。
関連する看護診断
1. 皮膚統合性障害のリスク状態:長期臥床、低栄養、失禁、加齢に伴う皮膚脆弱性に関連する。
2. 栄養摂取量不足:嚥下障害、食欲不振、高代謝状態に関連する。
3. 身体可動性障害:疼痛、筋力低下、意識レベルの低下に関連する。
4. 感染のリスク状態:皮膚統合性の破綻、免疫力低下、不適切な創傷ケアに関連する。
5. 苦痛:褥瘡による疼痛、体位制限、活動制限に関連する。
看護計画の要約
【OP(観察計画)】
1. 褥瘡部位の観察:深達度、大きさ、形状、辺縁、滲出液の量と性状、壊死組織の有無、肉芽組織・上皮化の状況、周囲皮膚の状態(発赤、熱感、腫脹、疼痛)を毎日評価する。
2. 全身状態の観察:バイタルサイン(体温、脈拍、血圧)、意識レベル、活動性、栄養状態(食事摂取量、体重、血清アルブミン値)、排泄状況(失禁の有無)を継続的に観察する。
3. 疼痛の有無と程度を評価する。
【TP(援助計画)】
1. 除圧:体圧分散寝具の使用、2時間ごとの体位変換(座位の場合は15〜30分ごと)、ポジショニングによる骨突出部の保護と摩擦・ずれの軽減を行う。
2. 創傷ケア:医師の指示に基づき、適切な創傷被覆材の選択と貼付、壊死組織の除去、滲出液の管理、感染コントロールを行う。清潔操作を徹底する。
3. 皮膚の清潔保持と保湿:排泄後は速やかに清拭し、乾燥を防ぐために保湿剤を使用する。
4. 栄養管理:高タンパク・高カロリー食の提供、経口栄養補助食品の活用を促す。必要に応じて医師や管理栄養士と連携する。
5. 疼痛コントロール:必要に応じて鎮痛剤を使用し、安楽な体位を工夫する。
【EP(教育計画)】
1. 褥瘡発生のメカニズム、予防の重要性、体位変換の必要性、皮膚の観察方法、栄養摂取の重要性について、患者本人や家族に分かりやすく説明する。
2. 早期発見のためのセルフチェック方法や、異常時の連絡先を指導する。
3. 退院後の在宅でのケアについて、具体的な方法や注意点を指導する。