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👶産婦人科

妊娠高血圧症候群

にんしんこうけつあつしょうこうぐん

妊娠中に高血圧とタンパク尿を呈する合併症

妊娠高血圧看護子癇母性

疾患の概要

妊娠高血圧症候群(Gestational Hypertension Syndrome: GHS)は、妊娠20週以降に高血圧が発症し、分娩後12週までに正常化する疾患です。以前は妊娠中毒症と呼ばれていました。病態生理としては、胎盤の形成不全により血管内皮細胞が障害され、血管攣縮や血液凝固能の亢進が起こり、全身の臓器に虚血性変化を引き起こします。主な原因は不明な点が多いですが、初産婦、多胎妊娠、高齢妊娠、肥満、糖尿病、腎疾患、高血圧の既往などがリスク因子とされています。主な症状は、収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上の高血圧です。蛋白尿を伴う場合は「妊娠高血圧腎症」と診断され、重症化すると頭痛、眼症状(視野狭窄、光視症)、上腹部痛、浮腫(特に顔面や手指)、体重増加、尿量減少などが現れます。さらに重症化すると、HELLP症候群(溶血、肝酵素上昇、血小板減少)、常位胎盤早期剥離、子癇(けいれん発作)などの合併症を引き起こし、母体と胎児の生命を脅かす可能性があります。検査としては、血圧測定、尿検査(蛋白、尿量)、血液検査(肝機能、腎機能、血小板数、凝固能、尿酸値)、胎児心拍数モニタリング、超音波検査による胎児発育評価などが行われます。治療は、軽症の場合は安静と食事療法が中心ですが、重症の場合は入院管理となり、降圧薬の投与、けいれん予防のための硫酸マグネシウム投与、胎児肺成熟促進のためのステロイド投与などが行われます。根本的な治療は分娩であり、母体と胎児の状態に応じて分娩時期が検討されます。

看護のポイント

妊娠高血圧症候群の看護では、母体と胎児の状態を常にモニタリングし、重症化の早期発見と合併症の予防が重要です。観察項目としては、血圧の頻回測定(原則4時間ごと、重症時は1時間ごと)、尿量と尿蛋白の確認、体重測定(浮腫の評価)、自覚症状の有無(頭痛、眼症状、上腹部痛など)を詳細に聴取します。胎児の状態評価として、胎動の確認、胎児心拍数モニタリング(NST)、超音波検査による胎児発育や羊水量の評価も重要です。ケアの実際としては、安静の保持(臥床安静、特に左側臥位は胎盤血流改善に有効)、食事指導(減塩、高タンパク、低カロリー食)、精神的サポート(不安の軽減、病状や治療に関する情報提供)を行います。薬物療法が導入された場合は、薬剤の効果と副作用の観察、正確な与薬が求められます。患者教育では、疾患の病態、高血圧が母体と胎児に与える影響、安静の重要性、食事療法、症状悪化時のサイン(頭痛、眼症状、上腹部痛、胎動減少など)とその際の連絡方法を具体的に指導します。また、退院後のセルフケア指導や、分娩後の血圧管理の継続についても説明します。早期発見と適切な介入が、母体と胎児の予後を大きく左右するため、多職種連携による継続的なケアが不可欠です。

アセスメントのポイント

フィジカルアセスメントでは、まずバイタルサインとして血圧を正確に測定します。左右差や体位による変化も確認します。脈拍、呼吸数、体温も測定し、異常の有無を確認します。全身の浮腫の有無と程度を評価し、特に顔面、手指、下腿の圧痕性浮腫に注意します。体重の急激な増加も浮腫の指標となります。神経学的所見として、頭痛、めまい、眼症状(光視症、かすみ目)、反射の亢進(膝蓋腱反射など)の有無を確認し、子癇の前兆や重症化のサインを見逃さないようにします。腹部のアセスメントでは、子宮底長や腹囲の測定、胎児心音の聴取、胎動の確認を行います。上腹部痛の有無もHELLP症候群の可能性を考慮し確認します。検査データのアセスメントでは、尿検査で尿蛋白の定性・定量、24時間蓄尿による尿蛋白量とクレアチニンクリアランスを確認します。血液検査では、肝機能(AST, ALT, LDH)、腎機能(BUN, Cr, 尿酸)、血小板数、凝固能(PT, APTT, フィブリノゲン)、ヘモグロビン、ヘマトクリットなどを経時的に評価し、臓器障害の進行やHELLP症候群の兆候を早期に捉えます。超音波検査では、胎児発育の状態、羊水量、胎盤の位置や形態、臍帯血流などを評価し、胎児well-beingを確認します。これらの情報を統合し、母体と胎児の現在の状態と今後のリスクをアセスメントします。

関連する看護診断

1. 出血のリスク:血小板減少、凝固能異常、血管内皮障害による。 2. 母体・胎児の活動耐性低下:高血圧、臓器虚血、安静の必要性による。 3. 不安:疾患の進行、母体・胎児への影響、治療方針への懸念による。 4. 知識不足:疾患の病態、治療、セルフケア、合併症に関する情報不足による。 5. 体液量過剰:血管内皮障害、腎機能低下、浮腫による。

看護計画の要約

OP: 血圧、脈拍、呼吸、体温、尿量、尿蛋白、体重、浮腫、自覚症状(頭痛、眼症状、上腹部痛など)、胎動、NST、血液検査データ(肝機能、腎機能、血小板、凝固能)を観察する。TP: 安静臥床(左側臥位)、医師の指示に基づく降圧薬・硫酸マグネシウムの正確な与薬と効果・副作用の観察、食事療法の実施(減塩、高タンパク)、環境調整(刺激の少ない環境)、精神的サポート、胎児心拍数モニタリング、超音波検査の介助を行う。EP: 疾患の病態、治療の必要性、安静の重要性、食事療法、自覚症状悪化時のサインとその対応について指導する。胎児の状態に関する情報提供と不安の軽減を図る。退院後のセルフケア(血圧測定、食事、受診)について指導する。