疾患一覧に戻る
👶産婦人科

前置胎盤

ぜんちたいばん

胎盤が子宮口を覆うように付着する異常で、出血リスクが高い

前置胎盤看護出血帝王切開

疾患の概要

前置胎盤とは、胎盤が子宮口の一部または全部を覆うように付着している状態を指します。通常、胎盤は子宮の上部に付着します。病態生理としては、胎盤が子宮下部に位置するため、妊娠後期の子宮下部の伸展に伴い、胎盤の一部が剥離しやすくなり、無痛性の性器出血を繰り返すことが特徴です。特に子宮口を完全に覆う「全前置胎盤」、子宮口の一部を覆う「部分前置胎盤」、子宮口に接しているが覆っていない「辺縁前置胎盤」に分類されます。原因は多因子性で、既往帝王切開、子宮手術歴、多産婦、高齢出産、多胎妊娠、喫煙などがリスク因子とされています。主な症状は、妊娠28週以降に突然始まる無痛性の性器出血です。出血量は少量から大量まで様々で、繰り返すことがあります。出血が大量になると、母体は貧血やショック状態に陥るリスクがあり、胎児も低酸素状態や胎児機能不全を起こす可能性があります。診断は、超音波検査によって行われます。特に経腟超音波検査は診断精度が高いです。治療は、出血の程度や妊娠週数、胎児の状態によって異なります。出血が少量で妊娠週数が早い場合は、安静臥床や子宮収縮抑制剤の投与などで経過観察し、胎児の成熟を待ちます。しかし、出血が持続したり大量になったりする場合は、妊娠週数にかかわらず帝王切開による分娩が選択されます。帝王切開の時期は、胎児の肺成熟を考慮し、通常36~37週頃に計画されます。

看護のポイント

前置胎盤の看護では、母体と胎児の安全確保が最優先です。まず、出血状況の正確な把握が重要です。出血量、性状、色調、随伴症状(腹痛、子宮収縮の有無)を継続的に観察し、記録します。出血がある場合は、安静臥床を徹底させ、活動制限を指導します。貧血予防のため、鉄剤の内服指導や食事指導も行います。胎児の状態を把握するため、胎児心拍モニタリングを定期的に実施し、胎児機能不全の兆候がないか確認します。患者教育としては、疾患の病態、起こりうるリスク(大量出血、緊急帝王切開)、安静の重要性、出血時の対応(すぐに医療機関に連絡すること)について詳しく説明し、理解を促します。また、長期入院となることが多いため、精神的なサポートも不可欠です。不安やストレスを軽減できるよう、傾聴し、情報提供を丁寧に行い、家族との面会調整なども配慮します。緊急帝王切開の可能性に備え、輸血同意の確認や、手術前の準備(検査、説明)を早期に行うことも重要です。退院後も、自宅での安静指導や、出血時の対応について再度確認し、安心した療養生活を送れるよう支援します。

アセスメントのポイント

前置胎盤のアセスメントでは、母体と胎児の両面から包括的に情報を収集します。母体のアセスメントでは、まずバイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸、体温)を頻回に測定し、ショック症状の有無を評価します。特に血圧低下や頻脈は出血性ショックの兆候であるため注意が必要です。性器出血の量、色調、性状(鮮血か暗赤色か、凝血塊の有無)を詳細に観察します。子宮収縮の有無、腹部の緊満感や圧痛の有無も確認します。貧血の徴候(顔色不良、倦怠感、めまい)も評価します。既往歴として、帝王切開歴、子宮手術歴、多産歴、喫煙歴などのリスク因子を確認します。精神状態として、疾患に対する理解度、不安の程度、サポート体制などをアセスメントします。検査データでは、血液検査(Hb、Ht、血小板数、凝固能)で貧血の進行度や止血能力を確認します。必要に応じて血液型や不規則抗体スクリーニングも行います。胎児のアセスメントでは、胎児心拍数モニタリング(NST)により、胎児心拍の基線、変動、一過性頻脈、一過性徐脈の有無を評価し、胎児機能不全の兆候がないか確認します。超音波検査の結果から、胎盤の位置、胎児の発育状態、羊水量などを確認します。これらの情報から、現在の母体と胎児の状態を総合的に判断し、適切な看護介入を計画します。

関連する看護診断

1. 出血に関連した「体液量減少のリスク」:前置胎盤による性器出血が、循環血液量の減少を引き起こす可能性があるため。 2. 胎盤機能不全および出血に関連した「胎児の酸素化障害のリスク」:胎盤の位置異常や剥離による出血が、胎児への酸素供給を阻害する可能性があるため。 3. 長期臥床と活動制限に関連した「活動耐性低下」:安静臥床の指示により、身体活動が制限され、筋力低下や全身倦怠感が生じる可能性があるため。 4. 疾患の予後や緊急帝王切開の可能性に関連した「不安」:前置胎盤の診断と、母体・胎児へのリスク、今後の治療方針に対する不確実性が、患者の精神的負担となるため。 5. 胎盤の位置異常と子宮下部の伸展に関連した「疼痛(子宮収縮に伴う)」:子宮収縮が生じた際に、胎盤剥離に伴う疼痛が生じる可能性があるため。

看護計画の要約

OP(観察計画): 1. バイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸、体温)を4時間ごとに測定し、出血時は頻回に測定。ショック症状(頻脈、血圧低下)の有無を観察。 2. 性器出血の量、色調、性状(鮮血、暗赤色、凝血塊の有無)を詳細に観察し記録。ナプキン交換回数も確認。 3. 子宮収縮の有無、腹部の緊満感、圧痛の有無を観察。 4. 胎児心拍数モニタリング(NST)を1日1回以上実施し、胎児心拍の基線、変動、一過性頻脈、一過性徐脈の有無を観察。 5. 貧血の徴候(顔色、倦怠感、めまい)の有無を観察。 6. 血液検査データ(Hb、Ht、血小板数、凝固能)の結果を確認。 7. 患者の精神状態、不安の程度、睡眠状況を観察。 TP(援助計画): 1. 絶対安静を徹底し、ベッド上での排泄、清拭を介助。不必要な体動を避けるよう指導。 2. 出血時は、医師の指示に基づき輸液管理、子宮収縮抑制剤の投与を行う。必要に応じて輸血の準備。 3. 胎児のモニタリングを継続し、異常時は医師へ報告。 4. 貧血予防のため、医師の指示に基づき鉄剤を投与。鉄分の多い食事を提案。 5. 不安軽減のため、疾患や治療に関する情報提供を丁寧に行い、質問に答える。傾聴し、精神的サポートを行う。 6. 長期臥床による合併症(深部静脈血栓症、褥瘡)予防のため、体位変換や足関節の運動を指導。必要に応じて弾性ストッキングの着用を促す。 7. 緊急帝王切開の可能性に備え、手術前の準備(同意書確認、検査)を早期に行う。 EP(教育計画): 1. 前置胎盤の病態、起こりうるリスク、安静の重要性について説明し、理解を促す。 2. 出血時の対応(すぐにナースコールすること、安静を保つこと)について具体的に指導。 3. 退院後の自宅での安静指導、出血時の対応、定期的な妊婦健診の重要性について説明。 4. 貧血予防のための食事指導、鉄剤内服の重要性について説明。 5. 胎動カウントの実施方法と、胎動減少時の対応について指導。