疾患の概要
小児ネフローゼ症候群は、腎臓の糸球体が障害され、多量のタンパク質が尿中に漏れ出すことで、低アルブミン血症、高脂血症、浮腫を主徴とする症候群です。病態生理としては、糸球体基底膜の透過性亢進により、血中のアルブミンが尿中に大量に排泄される(蛋白尿)ため、血中アルブミン濃度が低下(低アルブミン血症)します。これにより、血管内膠質浸透圧が低下し、血管内の水分が間質へ移動するため、全身性浮腫(特に顔面、眼瞼、下肢)が出現します。また、肝臓でのリポタンパク質合成が亢進し、高脂血症を呈します。原因の多くは特発性(一次性)であり、微小変化型ネフローゼ症候群が小児ネフローゼ症候群の約90%を占めます。その他、巣状分節性糸球体硬化症などがあります。主な症状は、全身の浮腫(特に顔面、眼瞼、下肢)、体重増加、腹水、胸水、乏尿、倦怠感などです。検査では、尿検査(高度蛋白尿、尿潜血陰性)、血液検査(低アルブミン血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症)、腎機能検査(通常は正常)、腎生検(確定診断)などが行われます。治療の第一選択はステロイド療法であり、多くの場合ステロイドに反応して寛解します。ステロイド抵抗性や頻回再発例には免疫抑制剤が使用されることもあります。浮腫に対しては利尿薬、アルブミン製剤の投与、食事療法(塩分制限、水分制限)が行われます。合併症として感染症、血栓症、急性腎不全などがあり、これらに対する予防と治療も重要です。
看護のポイント
小児ネフローゼ症候群の看護では、全身状態の観察と合併症の予防が重要です。浮腫の程度(部位、対称性、圧痕の有無)、体重、尿量、血圧、呼吸状態を毎日正確に測定・記録し、変化を早期に察知します。特に呼吸困難感や胸水・腹水の増悪には注意が必要です。感染症予防のため、手洗いの励行、口腔ケア、皮膚の清潔保持、不必要なカテーテル留置の回避を徹底します。ステロイド治療中は易感染状態となるため、発熱や倦怠感などの感染兆候に注意し、人混みを避けるよう指導します。食事療法では、浮腫の程度に応じて塩分制限や水分制限が必要となるため、患児の年齢や発達段階に合わせて理解しやすい言葉で説明し、家族と協力して食事内容を管理します。食欲不振や栄養状態の悪化にも留意します。活動制限は浮腫の程度や全身状態に応じて調整し、安静を保ちつつも、可能な範囲での遊びや学習活動を促し、患児のQOL維持に努めます。長期的な治療や再発の可能性もあるため、患児と家族が病気を受け入れ、セルフケア能力を高められるよう精神的なサポートも重要です。学校生活や友人関係への影響も考慮し、社会復帰に向けた支援を行います。
アセスメントのポイント
フィジカルアセスメントでは、まず全身の浮腫の有無と程度を詳細に観察します。特に顔面(眼瞼の腫脹)、下肢(脛骨前面の圧痕性浮腫)、仙骨部、腹部(腹水による膨満)、陰嚢・陰唇の浮腫に注意します。体重は浮腫の評価に最も重要な指標であり、毎日同時刻・同条件で測定します。バイタルサインでは、血圧の上昇、頻脈、呼吸数の増加がないかを確認し、胸水や腹水による呼吸困難の有無を評価します。皮膚の状態は、浮腫による伸展や脆弱性、感染兆候(発赤、熱感、疼痛)がないかを確認します。尿量と性状(泡立ちの有無、混濁)も重要な観察項目です。検査データでは、血液検査で血清アルブミン値の低下、総コレステロール値・トリグリセリド値の上昇、腎機能(BUN、クレアチニン)の確認を行います。尿検査では、尿蛋白定性・定量、尿比重、尿沈渣を確認し、高度蛋白尿の有無や血尿の有無を評価します。これらを総合的に判断し、患児の病態を正確に把握します。
関連する看護診断
1. 体液量過剰:腎機能障害によるナトリウムと水の貯留、および血漿膠質浸透圧の低下による。2. 栄養摂取量不足:食欲不振、食事制限、蛋白尿によるタンパク質の喪失に関連する。3. 感染リスク状態:ステロイド治療による免疫抑制、浮腫による皮膚の脆弱性、および侵襲的処置に関連する。4. 身体活動性低下:浮腫、倦怠感、および活動制限に関連する。5. 家族の対処能力障害:疾患の慢性性、再発の可能性、治療による副作用、および経済的負担に関連する。
看護計画の要約
OP(観察計画):全身の浮腫の程度、体重、尿量、バイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸)、呼吸状態、皮膚の状態、食事摂取量、活動レベル、感染兆候(発熱、倦怠感、局所の発赤・腫脹)、検査データ(血清アルブミン、コレステロール、BUN、クレアチニン、尿蛋白)を継続的に観察する。TP(治療計画):医師の指示に基づき、ステロイドや免疫抑制剤の正確な投与と副作用の観察、利尿薬やアルブミン製剤の投与と効果・副作用の観察、食事療法(塩分・水分制限)の実施、清潔ケアの実施(皮膚の保護、口腔ケア)、感染予防策の実施(手洗い、マスク着用指導)、活動制限の指導と調整、体重測定・尿量測定の正確な実施。EP(教育計画):疾患の病態、治療の必要性、薬剤の作用と副作用、食事療法(塩分・水分制限の具体的な方法)、感染予防策、再発時の症状と受診の目安、学校生活での注意点について患児と家族に説明する。自己管理能力を高めるための指導と精神的サポートを行い、不安の軽減を図る。腎臓病教室や患者会などの情報提供も行う。