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🦠感染症

MRSA感染症

えむあーるえすえーかんせんしょう

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌による院内感染

MRSA看護院内感染感染管理

疾患の概要

MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)感染症は、多くの抗生物質に耐性を持つ黄色ブドウ球菌によって引き起こされる感染症です。特にメチシリン系の抗生物質が効かないため、治療が困難になることがあります。病態生理としては、MRSAが皮膚、軟部組織、呼吸器、尿路、血液など、体の様々な部位に感染し、局所的な炎症から全身性の敗血症に至るまで、多様な症状を引き起こします。健康な人でもMRSAを保菌していることがありますが、免疫力の低下した高齢者、基礎疾患を持つ患者、長期入院患者、医療器具が挿入されている患者などで感染症を発症しやすい傾向があります。主な原因は、医療施設内での伝播(医療従事者の手指、医療器具を介して)や、市中での接触感染です。症状は感染部位によって異なり、皮膚感染では膿瘍、蜂窩織炎、せつ、ようなどがみられ、発赤、腫脹、疼痛、熱感を伴います。肺炎では発熱、咳、痰、呼吸困難、敗血症では高熱、悪寒、全身倦怠感、意識障害などが現れます。検査は、感染部位からの検体(血液、尿、喀痰、膿など)を採取し、培養検査によってMRSAを同定します。薬剤感受性試験も行われ、有効な抗生物質を特定します。治療は、薬剤感受性試験の結果に基づいて、MRSAに有効な抗生物質(バンコマイシン、テイコプラニン、リネゾリドなど)が選択されます。感染部位によっては、外科的ドレナージが必要となることもあります。医療施設内での感染拡大を防ぐため、接触感染予防策の徹底が非常に重要です。

看護のポイント

MRSA感染症の看護では、感染拡大の防止と患者の症状管理が重要です。まず、接触感染予防策の徹底が不可欠です。患者の隔離、個室管理、入室時の手洗い・手指消毒、ガウン・手袋の着用を厳守します。使用済みのリネンや医療廃棄物の適切な処理も重要です。患者のバイタルサイン(体温、脈拍、血圧、呼吸数)を定期的に測定し、発熱や呼吸状態の変化、意識レベルの低下など、全身状態の悪化を示す兆候がないか注意深く観察します。感染部位の観察では、発赤、腫脹、熱感、疼痛、排膿の有無や性状、増悪の有無を確認します。抗菌薬の確実な投与と効果・副作用の観察も重要です。患者には、MRSA感染症の特性、感染経路、予防策(手洗い、咳エチケットなど)について分かりやすく説明し、理解と協力を促します。特に、自己管理能力を高めるために、手洗いの重要性や、他者への感染リスクを避けるための行動について具体的に指導します。退院後の自宅での感染予防策についても指導し、家族への情報提供も行います。精神的なサポートも忘れずに行い、隔離による不安や孤立感の軽減に努めます。

アセスメントのポイント

フィジカルアセスメントでは、全身状態の把握が重要です。意識レベル、顔色、皮膚の状態(発疹、黄疸の有無)、浮腫の有無を観察します。バイタルサイン(体温、脈拍、血圧、呼吸数、SpO2)の測定は必須であり、特に発熱の有無とパターン、呼吸困難感の有無、呼吸音の異常(ラ音、水泡音など)を聴取します。感染部位の局所的な観察も重要で、皮膚感染であれば、発赤、腫脹、熱感、疼痛の程度、膿の性状や量、創部の状態(壊死組織の有無、肉芽形成の状況)を詳細に確認します。中心静脈カテーテルや尿道カテーテルが留置されている場合は、挿入部の発赤、腫脹、排膿の有無を観察します。検査データでは、炎症反応を示すCRP、白血球数、プロカルシトニンなどの上昇を確認します。腎機能を示すBUN、Cr、肝機能を示すAST、ALT、ALP、γ-GTPなどの値も、抗菌薬の選択や副作用評価のために重要です。培養検査の結果(MRSAの同定、薬剤感受性試験結果)は、治療方針を決定する上で最も重要な情報となります。画像診断(胸部X線、CTなど)は、肺炎や深部膿瘍の有無、広がりを評価するために行われます。

関連する看護診断

1. 感染リスク状態:免疫力の低下、侵襲的処置、環境中の病原体(MRSA)の存在に関連した。 2. 高体温:感染過程、炎症反応に関連した。 3. 皮膚統合性障害:感染部位の炎症、排膿、創傷形成に関連した。 4. 不安:疾患の診断、隔離、治療の長期化、予後への懸念に関連した。 5. 知識不足:MRSA感染症の病態、感染経路、予防策、治療に関する情報不足に関連した。

看護計画の要約

【OP】バイタルサイン(体温、脈拍、血圧、呼吸数、SpO2)を2〜4時間ごとに測定し、全身状態の変化を観察する。感染部位の発赤、腫脹、熱感、疼痛、排膿の有無と性状、創部の状態を毎日観察する。血液検査データ(CRP、白血球数、腎機能、肝機能)の推移を確認する。抗菌薬の効果と副作用(発疹、下痢、悪心など)を観察する。患者の不安の有無と程度を評価する。【TP】医師の指示に基づき、MRSAに有効な抗菌薬を正確に投与する。接触感染予防策を徹底し、手洗い・手指消毒、ガウン・手袋の着用を厳守する。必要に応じて個室管理を行い、医療器具の消毒・滅菌を適切に行う。感染部位の清潔保持と適切な処置(創部洗浄、ドレッシング交換)を行う。発熱時はクーリング、水分補給を行い、安楽を図る。患者の不安を傾聴し、安心できる環境を提供する。【EP】MRSA感染症の病態、感染経路、治療の必要性について説明する。手洗いの重要性、咳エチケット、使用済みリネンの適切な処理方法など、感染予防策について具体的に指導する。抗菌薬の正しい服用方法、副作用、中断しないことの重要性を説明する。退院後の生活における感染予防策や、体調不良時の受診の目安について指導する。必要に応じて、家族にも情報提供と指導を行う。