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🫁呼吸器

間質性肺炎

かんしつせいはいえん

肺の間質に炎症が起こり線維化する疾患群

間質性肺炎看護呼吸困難ステロイド

疾患の概要

間質性肺炎は、肺胞壁やその周囲の間質組織に炎症や線維化が生じる疾患群の総称です。肺胞と毛細血管の間にある間質が厚くなり、ガス交換が障害されることで、酸素が血液中に取り込まれにくくなります。病態生理としては、炎症が持続することで線維芽細胞が活性化し、コラーゲンなどの細胞外基質が過剰に産生され、肺が硬くなる線維化が進行します。原因は多岐にわたり、特発性間質性肺炎(IPF)のように原因不明なものが多いですが、膠原病(関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなど)に伴うもの、薬剤性(抗がん剤、抗不整脈薬など)、職業性(アスベスト、粉塵など)などが挙げられます。主な症状は、労作時の息切れ(呼吸困難)、乾いた咳(痰を伴わない)、発熱、倦怠感などです。進行すると安静時にも呼吸困難が出現し、チアノーゼを呈することもあります。聴診では、吸気時にベルクロラ音(マジックテープを剥がすような音)が特徴的です。検査では、胸部X線やCTで網状影、粒状影、蜂巣肺などの間質性変化が認められます。肺機能検査では拘束性換気障害(肺活量の低下)と拡散能の低下が特徴です。血液検査では、炎症反応の上昇や、膠原病関連抗体が陽性となる場合があります。確定診断には、気管支鏡検査による気管支肺胞洗浄(BAL)や、外科的肺生検が必要となることもあります。治療は、原因が特定できる場合はその原因の除去(薬剤中止など)を行います。特発性間質性肺炎に対しては、抗線維化薬(ピルフェニドン、ニンテダニブ)が病気の進行を抑制する目的で使用されます。炎症が強い場合はステロイドや免疫抑制剤が用いられることもあります。呼吸困難に対しては酸素療法が行われ、進行した場合には肺移植も選択肢となります。治療は病気の進行を遅らせることが主眼であり、完治は難しい場合が多いです。

看護のポイント

間質性肺炎の看護のポイントは、呼吸状態の継続的な観察と、患者の日常生活動作(ADL)の維持・向上、精神的サポートです。呼吸困難は患者のQOLを著しく低下させるため、呼吸状態の悪化の早期発見と対応が重要です。具体的には、呼吸回数、呼吸様式(努力呼吸の有無)、SpO2、チアノーゼの有無、呼吸困難の程度(modified Borg scaleなど)を定期的に評価します。また、咳の性状、発熱の有無、全身倦怠感なども確認します。酸素療法を受けている患者には、適切な流量と使用状況を確認し、低酸素血症の予防に努めます。日常生活においては、呼吸困難を軽減するための体位(半坐位など)の工夫や、活動と休息のバランスの指導が重要です。食事摂取時にも息切れが生じやすいため、少量頻回食や、栄養価の高い食事の提供を検討します。感染予防は非常に重要であり、手洗い、うがい、マスク着用、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種を指導します。患者教育としては、疾患の進行性や治療の目的を理解してもらい、自己管理能力を高めることが目標です。症状が悪化した際の対処法や、緊急時の連絡先などを明確に伝えます。また、慢性疾患であるため、不安や抑うつを抱えやすい患者も多いため、傾聴を基本とした精神的サポートを提供し、必要に応じて心理士やソーシャルワーカーへの連携も検討します。禁煙指導も必須です。

アセスメントのポイント

フィジカルアセスメントでは、まず視診で呼吸回数、呼吸様式(口すぼめ呼吸、肩呼吸、陥没呼吸の有無)、チアノーゼの有無、頸静脈の怒張を確認します。聴診では、吸気時に特徴的なベルクロラ音(捻髪音)の有無と部位、呼吸音の減弱を確認します。心音も聴取し、Ⅱ音の亢進など肺高血圧症の兆候がないか確認します。触診では、胸郭の動きの左右差や、リンパ節の腫脹がないかを確認します。打診では、肺野の濁音の有無を確認します。全身状態としては、体重減少、浮腫、皮膚の状態(膠原病の合併を示唆する皮疹など)も観察します。検査データでは、動脈血ガス分析で低酸素血症の有無と程度、PaCO2の上昇(進行期では呼吸不全の悪化を示す)を確認します。SpO2はパルスオキシメーターで継続的にモニタリングします。血液検査では、CRPや血沈などの炎症反応、KL-6(間質性肺炎の活動性マーカー)、SP-D(肺胞上皮障害のマーカー)、LDH(肺胞上皮障害のマーカー)の値を確認します。膠原病が疑われる場合は、抗核抗体、リウマトイド因子などの自己抗体も確認します。胸部X線やCT画像では、網状影、粒状影、蜂巣肺、牽引性気管支拡張などの間質性変化の有無と広がり、進行度を評価します。肺機能検査では、努力性肺活量(FVC)や1秒量(FEV1)の低下、%VC(予測肺活量に対する実測値の割合)の低下、拡散能(DLCO)の低下を確認します。これらのデータから、病状の進行度や治療効果を評価します。

関連する看護診断

1. ガス交換障害: 肺胞-毛細血管膜の変化による酸素と二酸化炭素の交換能力の低下に関連する。 2. 非効果的気道浄化: 肺線維化による気道分泌物の貯留と喀出困難に関連する。 3. 活動耐性低下: 呼吸困難と低酸素血症によるエネルギー不足に関連する。 4. 不安: 慢性疾患の進行性、予後不良、呼吸困難による身体的苦痛に関連する。 5. 栄養摂取量不足: 呼吸困難、食欲不振、エネルギー消費量の増加に関連する。

看護計画の要約

【OP(観察計画)】 1. 呼吸状態の観察: 呼吸回数、呼吸様式、SpO2、呼吸困難の程度(Borgスケール)、チアノーゼの有無、ベルクロラ音の聴取、咳の性状と回数。 2. 全身状態の観察: 体温、脈拍、血圧、意識レベル、倦怠感、体重、浮腫の有無、皮膚の状態。 3. 検査データの確認: 動脈血ガス分析(PaO2, PaCO2)、SpO2、CRP, KL-6, SP-D, LDH、胸部X線・CT画像、肺機能検査データ(FVC, DLCO)。 4. 治療効果と副作用の観察: 酸素療法中のSpO2、抗線維化薬やステロイド使用時の副作用(消化器症状、感染徴候、血糖値変動など)。 5. 精神状態の観察: 不安の有無、抑うつ症状、睡眠状況。 【TP(援助計画)】 1. 呼吸困難の緩和: 半坐位や前傾姿勢の保持、呼吸法(口すぼめ呼吸、腹式呼吸)の指導、酸素療法の実施と管理、加湿。 2. 感染予防: 手洗い、うがいの指導、マスク着用、ワクチン接種の推奨、口腔ケアの実施。 3. 活動と休息のバランス: ADLに応じた活動量の調整、休息時間の確保、必要に応じて理学療法士と連携した呼吸リハビリテーションの実施。 4. 栄養管理: 少量頻回食の提案、高カロリー・高タンパク食の提供、食事摂取時の呼吸困難軽減のための工夫(体位、食事形態)。 5. 精神的サポート: 傾聴、不安の表出を促す、情報提供、必要に応じて専門職への連携。 【EP(教育計画)】 1. 疾患と治療の理解: 間質性肺炎の病態、進行性、治療の目的と効果、副作用について説明。 2. 自己管理の指導: 酸素療法の正しい使用方法、呼吸困難時の対処法、感染予防策、服薬管理の重要性。 3. 症状悪化時の対応: 息切れの増悪、発熱、咳の増加などの症状出現時の連絡先と受診の目安を指導。 4. 生活指導: 禁煙の重要性、適度な運動と休息、バランスの取れた食事、インフルエンザ・肺炎球菌ワクチンの推奨。 5. 社会資源の紹介: 医療費助成制度、患者会、相談窓口など利用可能な社会資源の情報提供。