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⚗️内分泌・代謝

甲状腺機能低下症

こうじょうせんきのうていかしょう

甲状腺ホルモンの分泌低下により代謝が低下する疾患

甲状腺機能低下症看護倦怠感浮腫

疾患の概要

甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモン(サイロキシンT4、トリヨードサイロニンT3)の分泌が不足することで、全身の代謝が低下する疾患です。病態生理としては、甲状腺ホルモンは身体のエネルギー代謝、体温調節、心機能、消化器機能、神経機能など、多くの生理機能に関与しているため、その不足は全身に様々な症状を引き起こします。主な原因は、橋本病(慢性甲状腺炎)と呼ばれる自己免疫疾患が最も多く、甲状腺が破壊されることでホルモン産生能力が低下します。その他、甲状腺の手術による切除、放射線治療後の甲状腺破壊、先天的な甲状腺の異常、視床下部や下垂体の異常による甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌不全なども原因となります。主な症状は、全身倦怠感、無気力、寒がり、皮膚の乾燥、浮腫(特に顔面や下肢)、体重増加、便秘、徐脈、思考力・記憶力の低下、声枯れ、脱毛など多岐にわたります。重症化すると、意識障害を伴う粘液水腫性昏睡に至ることもあります。診断は、血液検査による甲状腺ホルモン(FT3、FT4)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)の測定が中心です。FT3、FT4が低値でTSHが高値であれば原発性甲状腺機能低下症と診断されます。治療は、不足している甲状腺ホルモンを補充する甲状腺ホルモン製剤(レボチロキシンナトリウムなど)の内服が基本となります。生涯にわたる服用が必要となることが多く、定期的な血液検査でホルモン値をモニタリングしながら用量を調整します。

看護のポイント

甲状腺機能低下症の看護では、患者さんの全身状態の観察と症状緩和が重要です。まず、疲労感や倦怠感が強いため、活動と休息のバランスを考慮した生活指導を行います。体温調節機能が低下しているため、保温に努め、室温管理や衣類の調整を指導します。皮膚の乾燥や浮腫に対しては、保湿ケアや浮腫部位のマッサージ、体位変換などを行います。便秘の症状がある場合は、水分摂取の促進、食物繊維の多い食事の提案、必要に応じて緩下剤の使用を検討します。徐脈や心機能低下のリスクがあるため、脈拍や血圧のモニタリングを継続します。甲状腺ホルモン補充療法が開始されたら、薬の飲み忘れがないよう服薬指導を徹底し、自己判断での中断や増減を行わないよう説明します。治療効果の評価のため、定期的な受診と血液検査の重要性を伝えます。精神的な落ち込みや意欲の低下が見られることも多いため、傾聴し、精神的サポートを提供することも大切です。また、粘液水腫性昏睡などの重篤な合併症の兆候(意識レベルの低下、低体温、呼吸抑制など)に注意し、早期発見に努めます。

アセスメントのポイント

フィジカルアセスメントでは、まず全身状態を視診で確認します。顔面や眼瞼の浮腫、皮膚の乾燥や蒼白、脱毛、声枯れの有無を観察します。触診では、皮膚の冷感や乾燥、浮腫の程度を確認します。甲状腺の腫大の有無も確認します。聴診では、心音の減弱や徐脈の有無を評価します。呼吸音にも異常がないか確認します。神経学的アセスメントとして、意識レベル、反応性、思考力、記憶力の低下、反射の減弱がないか確認します。バイタルサインでは、低体温、徐脈、低血圧に注意して測定します。検査データでは、血液検査結果が最も重要です。甲状腺ホルモン(FT3、FT4)が低値、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が高値であることを確認します。自己免疫性甲状腺炎が疑われる場合は、抗サイログロブリン抗体や抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(抗TPO抗体)の有無も確認します。コレステロール値の上昇や貧血(特に大球性貧血)が見られることもあります。これらのデータと患者さんの自覚症状を総合的に判断し、看護計画を立案します。

関連する看護診断

1. 活動耐性低下:全身倦怠感と代謝低下に関連した疲労のため。 2. 体液量過剰:毛細血管透過性亢進と腎血流低下に関連した浮腫のため。 3. 便秘:消化管運動の低下に関連した排便回数の減少のため。 4. 思考過程障害:甲状腺ホルモン不足による脳機能低下に関連した記憶力・集中力の低下のため。 5. 体温変動のリスク:代謝低下と熱産生能力の低下に関連した低体温のリスクのため。

看護計画の要約

OP(観察計画):全身倦怠感の程度、浮腫の部位と程度、皮膚の状態(乾燥、冷感)、便秘の有無と程度、バイタルサイン(特に体温、脈拍、血圧)、意識レベル、思考力・記憶力の変化、体重の変化を観察する。血液検査データ(FT3, FT4, TSH, コレステロール値)をモニタリングする。TP(治療・援助計画):甲状腺ホルモン製剤の確実な内服を支援し、副作用の有無を観察する。保温に努め、室温調整や衣類の選択を指導する。皮膚の保湿ケア、浮腫部位のマッサージを行う。便秘に対し、水分摂取の促進、食物繊維の多い食事を提案する。活動と休息のバランスを考慮した生活リズムの確立を支援する。精神的な落ち込みに対し、傾聴と精神的サポートを提供する。EP(教育計画):甲状腺機能低下症の疾患概念、治療の必要性、甲状腺ホルモン製剤の正しい服用方法と継続の重要性を説明する。症状悪化時の対処法と受診の目安を指導する。体温調節、皮膚ケア、食事内容(水分・食物繊維)に関するセルフケア指導を行う。疲労管理のための活動と休息のバランスの取り方を指導する。定期的な受診と血液検査の重要性を説明する。