疾患の概要
脊椎圧迫骨折は、椎体が上下方向に押しつぶされるように骨折する状態です。最も多い原因は骨粗鬆症で、特に高齢者の女性に多く見られます。転倒や尻もちなどの軽微な外力で発生することがありますが、重度の骨粗鬆症ではくしゃみや咳、体位変換といった日常動作でも生じることがあります。病態生理としては、骨密度が低下した椎体は強度を失い、垂直方向の圧力に耐えきれずに潰れてしまいます。これにより、椎体高が減少し、脊柱の変形(円背など)や神経圧迫を引き起こす可能性があります。主な症状は、骨折部位の強い痛みで、特に体動時や体位変換時に増強します。安静時にも鈍痛が続くことがあります。また、骨折が多発すると身長の低下や円背が進行し、胸郭の圧迫による呼吸機能の低下や、腹部圧迫による消化器症状(食欲不振、便秘など)を呈することもあります。神経症状(しびれ、麻痺など)は比較的まれですが、骨片が脊髄を圧迫した場合に起こり得ます。診断は、X線検査で椎体高の減少や変形を確認し、MRI検査で新鮮骨折と陳旧性骨折の鑑別や、神経圧迫の有無を評価します。治療は、保存療法が中心で、安静臥床、鎮痛剤の投与、コルセットによる固定を行います。骨粗鬆症が原因の場合は、骨粗鬆症治療薬の投与も並行して行われます。痛みが強い場合や神経症状がある場合は、経皮的椎体形成術(BKP/VP)などの手術的治療が検討されることもあります。
看護のポイント
脊椎圧迫骨折の看護では、まず疼痛管理が最重要です。患者の痛みの程度を定期的に評価し、医師の指示に基づき鎮痛剤を適切に投与します。非薬物療法として、安楽な体位の保持、温罨法なども有効です。安静臥床が必要な期間は、褥瘡予防のため体位変換を定期的に行い、皮膚の状態を観察します。また、長期臥床による筋力低下やADL低下を防ぐため、痛みの状態に応じて早期からのリハビリテーションを促します。体幹を安定させるためのコルセット装着時は、装着方法や装着時間、皮膚トラブルの有無を確認し、適切な指導を行います。排泄ケアでは、臥位での排泄が困難な場合はポータブルトイレの利用や、必要に応じて排泄補助を行います。便秘になりやすいため、水分摂取や食物繊維の摂取を促し、排便コントロールに努めます。患者教育としては、疾患の理解を深め、骨粗鬆症の治療の重要性、再骨折予防のための生活指導(転倒予防、適切な運動、栄養指導)、コルセットの正しい使用方法などを具体的に説明します。退院後の生活を見据え、自宅環境の整備や介護サービスの利用についても情報提供を行います。精神的なサポートも重要であり、痛みやADL制限による不安や抑うつ状態に配慮し、傾聴や共感的な態度で接します。
アセスメントのポイント
アセスメントでは、まず疼痛の部位、性質、強さ(NRS/VAS)、増悪・緩和因子を詳細に聴取します。特に体動時痛の有無と程度は重要です。フィジカルアセスメントでは、骨折部位の圧痛、叩打痛の有無を確認します。脊柱の変形(円背、側弯)や身長の低下がないか観察します。神経学的アセスメントとして、下肢のしびれ、感覚障害、運動麻痺の有無、膀胱直腸障害の有無を確認し、脊髄神経の圧迫症状がないか評価します。皮膚の状態は、コルセット装着部位や仙骨部、踵部を中心に発赤や褥瘡の有無を観察します。呼吸状態は、円背による胸郭の圧迫がないか、呼吸音や呼吸パターンを確認します。消化器症状として、腹部膨満感、便秘の有無を聴取します。ADLの状況は、起き上がり、座位、立位、歩行、排泄動作など、具体的な動作能力を評価し、介助の必要性を判断します。検査データでは、X線、CT、MRI画像から骨折の部位、程度、椎体高の減少、骨片の転位、神経圧迫の有無を確認します。骨密度検査(DXA法)の結果から骨粗鬆症の重症度を把握します。血液検査では、炎症反応(CRP、白血球数)の有無、骨代謝マーカー(ALP、TRACP-5bなど)の変動、電解質バランス、腎機能、肝機能などを確認し、全身状態や併存疾患の有無を評価します。
関連する看護診断
1. 急性疼痛:脊椎の圧迫骨折による神経終末の刺激と炎症に関連した。2. 身体可動性障害:疼痛、コルセット装着、および骨折による身体活動の制限に関連した。3. 転倒リスク:骨粗鬆症、疼痛、筋力低下、およびバランス能力の低下に関連した。4. 知識不足:疾患の病態、治療、および再骨折予防のためのセルフケアに関する知識不足に関連した。5. 身体イメージの混乱:円背、身長の低下、およびADL制限による身体の変化に関連した。
看護計画の要約
OP(観察計画):疼痛の部位、性質、強さ、増悪・緩和因子を継続的に評価する。神経症状(しびれ、麻痺、膀胱直腸障害)の有無と程度を観察する。皮膚の状態(発赤、褥瘡、コルセット装着部の皮膚トラブル)を観察する。ADLの状況(起き上がり、移乗、歩行など)と介助の必要性を評価する。呼吸状態、排便状況を観察する。患者の不安や抑うつ状態をアセスメントする。TP(治療計画):医師の指示に基づき鎮痛剤を適切に投与し、効果と副作用を観察する。安楽な体位を保持し、体位変換を定期的に行い褥瘡を予防する。コルセットの正しい装着を指導・介助し、皮膚トラブルの有無を確認する。痛みに応じて早期からリハビリテーションを促し、ADL拡大を支援する。排泄ケアを支援し、便秘予防のための水分・食物繊維摂取を促す。EP(教育計画):疾患の病態、治療の必要性、予後について説明する。疼痛管理の方法(鎮痛剤の使用、非薬物療法)を指導する。コルセットの正しい装着方法、装着時間、皮膚ケアについて指導する。再骨折予防のための生活指導(転倒予防、骨粗鬆症治療の継続、栄養摂取、適切な運動)を行う。退院後の生活を見据え、自宅環境の整備や介護サービスの利用について情報提供する。不安やストレスに対する対処法を共に検討する。