疾患の概要
大腸がんは、大腸の粘膜から発生する悪性腫瘍で、腺腫という良性ポリープががん化して発生するケースが多いです。病態生理としては、異常な細胞増殖により腫瘍が形成され、進行すると大腸の壁を越えて浸潤し、リンパ節や他臓器への転移(肝臓、肺など)を起こします。原因は多岐にわたり、遺伝的要因(家族性大腸腺腫症、リンチ症候群など)、生活習慣(高脂肪・低食物繊維食、過度の飲酒、喫煙、肥満)、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)などが挙げられます。主な症状は、早期では無症状のことが多いですが、進行すると便潜血、血便、下血、便通異常(下痢と便秘の繰り返し、便が細くなる)、腹痛、腹部膨満感、貧血による全身倦怠感、体重減少などが出現します。検査は、便潜血検査、大腸内視鏡検査(生検による確定診断)、CT・MRI(病期診断、転移の有無)、腫瘍マーカー(CEA、CA19-9:治療効果判定や再発モニタリングに使用)などが行われます。治療は、病期によって異なりますが、内視鏡的切除術(早期がん)、外科的切除術(開腹手術、腹腔鏡手術)、化学療法、放射線療法、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などがあります。ストーマ造設が必要となる場合もあります。
看護のポイント
大腸がん患者への看護は、診断期から治療、回復期、終末期まで多岐にわたります。まず、診断期の患者には、疾患や治療に関する正確な情報提供と精神的サポートが重要です。治療期においては、手術前後の全身状態の管理、疼痛コントロール、消化器症状の緩和(悪心、嘔吐、便通異常)、感染予防、栄養管理が中心となります。特に、術後は腸蠕動の回復を促し、早期離床を支援します。化学療法や放射線療法を受ける患者には、副作用(骨髄抑制、悪心嘔吐、口内炎、脱毛、皮膚炎など)の観察と対処、セルフケア支援が不可欠です。ストーマ造設患者に対しては、ストーマケアの指導(装具の選択、交換方法、皮膚トラブルの予防と対処)と精神的サポートが重要であり、退院後の生活を見据えた自立支援が求められます。患者教育としては、疾患の再発徴候や合併症の早期発見、食事指導(術後消化器症状に合わせた食事内容、便通コントロール)、排便習慣の確立、日常生活での注意点、社会資源の活用などを具体的に行います。また、患者や家族の抱える不安や苦痛を傾聴し、心理的サポートを提供することも重要な看護の役割です。
アセスメントのポイント
フィジカルアセスメントでは、まず全身状態として顔色、皮膚・粘膜の状態(貧血の有無)、体重減少の有無、全身倦怠感を観察します。消化器系では、腹部の視診(膨満、手術痕、ストーマの状態)、聴診(腸蠕動音の聴取)、触診(圧痛、腫瘤の有無、筋性防御)を行います。排便状況は特に重要で、便の性状(血便、下血、細い便)、回数、排便時の苦痛の有無を詳細に聴取します。ストーマ造設患者の場合は、ストーマの色、形、大きさ、周囲皮膚の状態、排泄物の性状と量を確認します。疼痛の有無、部位、性状、程度(NRSなど)も評価します。検査データでは、血液検査として貧血の指標(Hb、Ht、RBC)、炎症反応(CRP、WBC)、肝機能(AST、ALT、ALP、γ-GTP)、腎機能(BUN、Cr)、電解質バランスをモニタリングします。腫瘍マーカー(CEA、CA19-9)は、診断時だけでなく治療効果判定や再発モニタリングの指標として重要です。画像検査(CT、MRI、PET)の結果から、腫瘍の大きさ、浸潤度、リンパ節転移、遠隔転移の有無を確認し、病期を把握します。
関連する看護診断
1. 疼痛:術創、腫瘍の浸潤、化学療法による口内炎などに関連した。
2. 栄養摂取量不足:悪心、嘔吐、食欲不振、消化吸収障害、嚥下困難、疼痛、化学療法による副作用に関連した。
3. 身体イメージの混乱:ストーマ造設、脱毛、体重減少、身体機能の変化に関連した。
4. 感染リスク状態:骨髄抑制、術後創部、侵襲的処置、免疫力低下に関連した。
5. 不安:診断、治療、予後、再発、身体の変化、経済的問題、家族への影響に関連した。
看護計画の要約
OP:全身状態(バイタルサイン、意識レベル、顔色、皮膚・粘膜)、消化器症状(悪心、嘔吐、腹痛、腹部膨満感、排便状況、ストーマの状態と排泄物)、疼痛の有無と程度、栄養状態(食事摂取量、体重、血液データ)、検査データ(Hb、WBC、CRP、肝腎機能、電解質、腫瘍マーカー)、副作用の有無と程度(化学療法、放射線療法)、精神状態(不安、抑うつ、睡眠状況)を観察する。TP:疼痛コントロール(鎮痛剤の適切な使用、体位調整、リラクゼーション)、消化器症状の緩和(制吐剤、下痢止め、便秘薬の管理、食事内容の調整)、栄養管理(経口摂取困難時は経腸・経静脈栄養の検討、高カロリー輸液管理)、感染予防(手洗い、清潔操作、創部ケア、口腔ケア)、ストーマケア(装具交換、皮膚保護、セルフケア指導)、早期離床と運動の促進、精神的サポート(傾聴、受容、情報提供、家族支援)を行う。EP:疾患と治療に関する説明(手術、化学療法、放射線療法の目的、副作用、対処法)、疼痛管理の方法、食事指導(術後食事、便通コントロール)、排便習慣の確立、ストーマケアの指導と自立支援、再発徴候や合併症の早期発見、社会資源の紹介、退院後の生活指導(日常生活の注意点、受診の必要性)を行う。