疾患の概要
胆嚢炎・胆石症は、胆道系の疾患であり、密接に関連しています。胆石症は胆汁の成分が固まってできる結石(胆石)が胆嚢内や胆管内に形成される病態です。胆石の主成分はコレステロールやビリルビンで、食生活の欧米化や肥満、加齢などがリスク因子とされています。無症状のことも多いですが、胆石が胆嚢の出口や胆管に詰まると、胆汁の流れが阻害され、様々な症状を引き起こします。胆嚢炎は、胆石が胆嚢管に嵌頓して胆汁の鬱滞が起こり、細菌感染を伴うことで胆嚢に炎症が生じる状態です。急性胆嚢炎では、右上腹部痛(特に食後や脂肪分の多い食事後に増悪)、発熱、悪心、嘔吐、黄疸(胆管炎を合併した場合)などが主な症状です。慢性胆嚢炎は、急性胆嚢炎を繰り返すことで胆嚢壁が肥厚・線維化する状態です。検査としては、腹部超音波検査が最も有用で、胆石の有無、胆嚢壁の肥厚、胆嚢周囲の液体貯留などを確認します。血液検査では、炎症反応(CRP、白血球数)、肝機能障害(AST、ALT、γ-GTP、ALP)、胆道系酵素(T-Bil、D-Bil)などを評価します。CTやMRI(MRCP)も詳細な診断に用いられます。治療は、急性期には絶食、輸液、鎮痛剤、抗菌薬投与による保存的治療が中心となります。症状が改善しない場合や重症例、再発を繰り返す場合には、胆嚢摘出術(腹腔鏡下胆嚢摘出術が一般的)が選択されます。胆管結石に対しては、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)を用いた結石除去術が行われることもあります。
看護のポイント
胆嚢炎・胆石症の看護では、患者の苦痛緩和と合併症予防が重要です。まず、疼痛管理として、医師の指示に基づいた鎮痛剤の適切な使用と、効果の評価を行います。患者の表情、痛みの部位、強さ、性状(差し込むような痛み、持続的な痛みなど)を詳細に観察し、痛みの増強因子や緩和因子を把握します。絶食中の患者には、脱水予防のため十分な輸液管理を行い、電解質バランスの維持に努めます。悪心・嘔吐がある場合は、制吐剤の使用や安楽な体位の調整、口腔ケアを実施し、不快感を軽減します。発熱時には、解熱剤の使用とともに、クーリングや環境調整を行い、体温管理を徹底します。術前には、手術への不安軽減のため、術式や術後の経過について分かりやすく説明し、疑問に答えます。術後は、疼痛管理、創部管理、ドレーン管理(挿入されている場合)、早期離床の促進、呼吸器合併症予防のための深呼吸・咳嗽指導が重要です。食事再開時は、少量から開始し、脂肪分の少ない消化の良い食事を提供します。患者教育としては、退院後の食事指導(低脂肪食の継続、過食の回避、規則正しい食生活)、飲酒制限、再発予防のための生活習慣の改善、症状悪化時の受診の目安などを具体的に説明します。また、胆嚢摘出後の下痢などの消化器症状についても情報提供し、不安の軽減を図ります。
アセスメントのポイント
フィジカルアセスメントでは、まずバイタルサイン(体温、脈拍、血圧、呼吸数)の測定を行い、発熱、頻脈、低血圧などの炎症やショックの兆候がないかを確認します。腹部診察では、視診で腹部膨隆や黄疸の有無、触診で右上腹部の圧痛(Murphy徴候の有無)、筋性防御、反跳痛の有無を確認します。聴診では腸蠕動音の異常(減弱など)に注意します。皮膚・粘膜の観察では、黄疸の有無、掻痒感の有無、脱水徴候(皮膚の乾燥、口腔粘膜の乾燥、ツルゴール低下)を評価します。検査データでは、血液検査で炎症反応(白血球数、CRP)の上昇、肝胆道系酵素(AST、ALT、ALP、γ-GTP、T-Bil、D-Bil)の上昇、アミラーゼ・リパーゼの上昇(膵炎合併時)に注目します。画像検査(腹部超音波、CT、MRI)の結果から、胆石の大きさ・数・位置、胆嚢壁の肥厚度、胆嚢周囲の液体貯留、胆管の拡張、総胆管結石の有無などを確認し、病態の重症度や合併症の有無を把握します。これらの情報から、患者の全身状態、疾患の進行度、合併症のリスクを総合的にアセスメントします。
関連する看護診断
急性疼痛(胆石の嵌頓や胆嚢の炎症による右上腹部痛に関連して);栄養摂取バランス異常:必要量以下(悪心、嘔吐、絶食、脂肪食の制限に関連して);体液量減少のリスク(悪心、嘔吐、発熱、絶食中の不十分な水分摂取に関連して);感染のリスク(胆汁の鬱滞、胆道系の炎症、侵襲的処置に関連して);不安(診断、治療、手術、術後経過、再発への懸念に関連して)
看護計画の要約
OP: 疼痛の部位、強さ、性状、増悪・緩和因子、鎮痛剤の効果を観察する。バイタルサイン(特に体温、脈拍)を継続的に測定し、炎症やショックの兆候を早期発見する。悪心・嘔吐の有無と程度、排泄状況(便の色、性状、黄疸の有無)を観察する。血液検査データ(白血球数、CRP、肝胆道系酵素)や画像検査(超音波、CT)の結果を確認し、病態の変化を把握する。術後であれば、創部の状態、ドレーン排液の量と性状、呼吸状態を観察する。TP: 医師の指示に基づき、鎮痛剤、抗菌薬、制吐剤などを適切に投与し、効果と副作用を観察する。絶食中は十分な輸液管理を行い、電解質バランスをモニタリングする。悪心・嘔吐時は、安楽な体位の調整、口腔ケアを実施する。発熱時は、クーリングや環境調整を行い、体温管理を行う。術前は、手術への不安軽減のため、術式や術後の経過について分かりやすく説明する。術後は、早期離床を促し、深呼吸・咳嗽指導を行う。食事再開時は、低脂肪で消化の良い食事を少量から提供し、消化器症状の有無を観察する。EP: 退院後の食事指導(低脂肪食の継続、過食の回避、規則正しい食生活)を行う。飲酒制限の必要性を説明する。症状悪化時(強い腹痛、発熱、黄疸など)の受診の目安を具体的に指導する。胆嚢摘出後の消化器症状(下痢など)について情報提供し、対処法を説明する。再発予防のための生活習慣の改善(適度な運動、体重管理)を促す。