疾患の概要
脳梗塞は、脳の血管が詰まり、その先の脳組織に血液が供給されなくなることで、脳細胞が壊死する疾患です。病態生理としては、血管が閉塞することで虚血状態となり、酸素や栄養が不足し、脳細胞の機能障害や壊死を引き起こします。原因は大きく分けて、アテローム血栓性脳梗塞(動脈硬化で狭くなった血管に血栓ができる)、心原性脳塞栓症(心臓内でできた血栓が脳に飛ぶ)、ラクナ梗塞(脳の細い血管が詰まる)などがあります。主な症状は、突然の片麻痺(手足の麻痺)、感覚障害、構音障害(ろれつが回らない)、失語症(言葉が出にくい、理解できない)、意識障害、視野障害、めまい、頭痛など、閉塞部位によって多岐にわたります。発症から早期の治療が重要であり、時間経過とともに症状が固定化する可能性があります。検査としては、頭部CTやMRIで梗塞部位や範囲を確認し、MRAや頸動脈エコーで血管の評価を行います。心電図や心エコーで心原性塞栓症の原因を特定することもあります。血液検査では、凝固系や脂質、血糖値などを確認します。治療は、発症から4.5時間以内であれば血栓溶解療法(t-PA静注療法)が検討され、発症から24時間以内であれば血栓回収療法が行われることもあります。急性期を過ぎると、抗血小板薬や抗凝固薬による再発予防、リハビリテーションによる機能回復が中心となります。
看護のポイント
脳梗塞の看護は、急性期から回復期、維持期まで多岐にわたります。急性期では、バイタルサイン(特に血圧、呼吸状態、意識レベル)の厳重なモニタリングが不可欠です。神経学的所見(麻痺の程度、瞳孔、構音、嚥下機能など)を頻回に評価し、変化を早期に発見することが重要です。誤嚥性肺炎の予防のため、嚥下機能の評価と食事形態の調整、口腔ケアを徹底します。褥瘡予防のため、体位変換や皮膚の観察も欠かせません。麻痺がある場合は、関節拘縮予防のための早期離床やROM訓練を医師や理学療法士と連携して行います。患者教育としては、疾患の理解を深め、再発予防のための生活習慣の改善(禁煙、節酒、食事療法、運動療法)や内服薬の継続の重要性を指導します。また、家族への情報提供や精神的サポートも重要です。回復期では、リハビリテーションへの意欲向上を支援し、自宅退院に向けたADLの拡大を目指します。排泄の自立支援や、認知機能障害がある場合のコミュニケーション方法の工夫も必要です。退院後の生活を見据え、介護保険制度や社会資源の活用についても情報提供を行います。
アセスメントのポイント
脳梗塞のアセスメントでは、フィジカルアセスメントと検査データの両面から包括的に行います。フィジカルアセスメントでは、まず意識レベルをJCSやGCSで評価し、経時的な変化を追います。瞳孔の左右差、対光反射、眼球運動の有無も確認します。麻痺の有無や程度(MMTなど)、感覚障害の範囲、構音障害や失語症の有無と程度を具体的に評価します。嚥下機能は、嚥下反射の有無、むせの有無、唾液の貯留などを観察し、必要に応じて嚥下スクリーニングを行います。呼吸状態は、呼吸数、呼吸パターン、SpO2をモニタリングし、誤嚥徴候がないか確認します。循環状態は、血圧、脈拍、不整脈の有無を確認します。皮膚状態は、麻痺側を中心に発赤や皮膚損傷がないか観察し、褥瘡リスクを評価します。排泄状況(尿失禁、便秘など)も把握します。検査データでは、頭部CT/MRIで梗塞巣の部位、大きさ、浮腫の有無を確認します。血液検査では、炎症反応(CRP)、凝固系(PT-INR, APTT)、血糖値、脂質、腎機能、肝機能などを確認し、治療方針や合併症の有無を評価します。心電図や心エコーでは、心原性塞栓症の原因となる不整脈や心臓の異常がないかを確認します。
関連する看護診断
1. 脳組織灌流障害のリスク状態: 脳血流の低下により脳組織への酸素供給が不足する可能性があるため。2. 身体可動性障害: 脳梗塞による麻痺や筋力低下のため、日常生活動作が制限されるため。3. 誤嚥のリスク状態: 嚥下機能障害により、食物や水分が気道に入る危険性があるため。4. 言語的コミュニケーション障害: 脳梗塞による失語症や構音障害のため、意思疎通が困難になるため。5. セルフケア不足(食事、排泄、更衣など): 麻痺や認知機能障害により、自己の身の回りのことが困難になるため。
看護計画の要約
OP(観察項目): 意識レベル(JCS/GCS)、バイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸数、SpO2、体温)、神経学的所見(麻痺の程度、感覚障害、瞳孔、構音、嚥下機能)、頭痛・嘔気・嘔吐の有無、呼吸状態(呼吸パターン、SpO2)、循環状態(不整脈の有無)、皮膚状態(発赤、褥瘡)、排泄状況、検査データ(頭部CT/MRI、血液データ、心電図など)、内服薬の効果と副作用、リハビリテーションへの参加状況、精神状態。TP(援助項目): 意識レベルに応じた体位管理と体位変換(2時間ごと)、関節拘縮予防のためのROM訓練、誤嚥予防のための食事形態の調整と嚥下訓練、口腔ケアの実施、排泄介助と排泄習慣の確立支援、清潔ケアの実施、褥瘡予防のためのスキンケア、医師の指示に基づく薬剤管理と効果・副作用の観察、リハビリテーションへの参加促しと環境調整、不安の傾聴と精神的サポート。EP(教育項目): 疾患の病態と治療の必要性、内服薬の目的と継続の重要性、再発予防のための生活習慣指導(禁煙、節酒、食事、運動)、嚥下訓練の方法、麻痺側へのアプローチ方法、ADL拡大のための工夫、福祉用具の活用方法、介護保険制度や社会資源の紹介、家族への介護方法指導と精神的サポート。