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🦠感染症

クロストリジオイデス・ディフィシル感染症

くろすとりじおいですでぃふぃしるかんせんしょう

抗菌薬使用後に発症する腸管感染症で、院内感染の原因

CDI看護院内感染下痢

疾患の概要

クロストリジオイデス・ディフィシル感染症(CDI)は、Clostridioides difficileという嫌気性グラム陽性桿菌によって引き起こされる腸管感染症です。この細菌は、抗菌薬の使用により腸内細菌叢のバランスが崩れた際に増殖し、毒素(トキシンAとトキシンB)を産生することで、下痢や偽膜性大腸炎などの症状を引き起こします。主な原因は、広域抗菌薬の長期使用で、特に高齢者や免疫抑制状態の患者、長期入院患者でリスクが高まります。症状は、水様性下痢(1日数回から20回以上)、腹痛、発熱、悪心、食欲不振などです。重症化すると、脱水、電解質異常、低アルブミン血症、麻痺性イレウス、中毒性巨大結腸症、腸管穿孔、敗血症性ショックに至り、致死的な経過をたどることもあります。診断は、便中のC. difficile毒素(トキシンA/B)の検出や、便培養、PCR法によるC. difficile遺伝子の検出によって行われます。治療は、原因となっている抗菌薬の中止が第一選択であり、必要に応じてメトロニダゾールやバンコマイシンなどの抗菌薬が経口投与されます。再発を繰り返す場合は、糞便微生物叢移植(FMT)が検討されることもあります。

看護のポイント

CDI患者の看護では、感染拡大の防止と症状緩和が重要です。まず、徹底した標準予防策と接触予防策を実施します。患者の個室管理を原則とし、入室時には手袋とガウンを着用し、退室時には流水と石鹸による手洗いを励行します(アルコール消毒は効果が限定的です)。便器や環境表面の清掃・消毒には、次亜塩素酸ナトリウムを使用します。患者の排便回数、便の性状(水様性、粘液・血液の有無)、腹痛の有無と程度、発熱、悪心、食欲不振、脱水症状(口腔粘膜の乾燥、皮膚のツルゴール低下、尿量減少)を継続的に観察します。下痢による肛門周囲皮膚炎の予防とケアも重要で、排便後は優しく洗浄し、乾燥後、保護剤を塗布します。食事は消化の良いものを少量ずつ提供し、水分・電解質の補給を促します。患者や家族には、疾患の特性、感染経路、手洗いの重要性、治療薬の正しい服用方法、再発の可能性について具体的に説明し、不安の軽減とセルフケア能力の向上を支援します。

アセスメントのポイント

CDI患者のアセスメントでは、全身状態と消化器症状に焦点を当てます。フィジカルアセスメントでは、まずバイタルサイン(体温、脈拍、血圧、呼吸数)を測定し、発熱や頻脈、低血圧の有無を確認します。腹部のアセスメントでは、視診で腹部膨満の有無、聴診で腸蠕動音の亢進または減弱、触診で圧痛や筋性防御の有無を確認します。特に中毒性巨大結腸症の兆候である著しい腹部膨満や圧痛、腸蠕動音の消失には注意が必要です。皮膚・粘膜のアセスメントでは、脱水症状の有無(口腔粘膜の乾燥、皮膚のツルゴール低下)や、下痢による肛門周囲の皮膚発赤・びらんを確認します。検査データでは、炎症反応(CRP、白血球数)の上昇、腎機能(BUN、クレアチニン)の悪化、電解質異常(Na、K、Cl)の有無、低アルブミン血症に注意します。便培養やC. difficile毒素検査の結果も確認し、治療効果判定や再発の有無を評価します。抗菌薬の使用歴や最近の入院歴、基礎疾患(特に免疫抑制状態)も重要な情報です。

関連する看護診断

1. 下痢:腸管粘膜の炎症と毒素産生に関連した腸蠕動亢進と便の水分吸収障害による。2. 体液量減少のリスク:持続的な下痢と経口摂取量不足に関連した水分・電解質の喪失による。3. 栄養摂取量不足:下痢、腹痛、食欲不振、悪心に関連した消化吸収能力の低下と経口摂取量減少による。4. 皮膚統合性障害のリスク:頻回な水様便と肛門周囲の刺激に関連した皮膚の浸軟と炎症による。5. 感染伝播のリスク:C. difficileの排泄と不適切な衛生習慣に関連した感染性微生物の存在による。

看護計画の要約

OP(観察計画):バイタルサイン(特に体温、脈拍)、排便回数・量・性状、腹部症状(腹痛、腹部膨満、腸蠕動音)、脱水症状(口腔粘膜、皮膚ツルゴール、尿量)、食事摂取量、皮膚状態(肛門周囲)、検査データ(炎症反応、電解質、腎機能、便中毒素)を観察する。TP(援助計画):医師の指示に基づき抗菌薬を正確に投与し、副作用を観察する。下痢による脱水予防のため、経口補水液や点滴による水分・電解質補給を行う。消化の良い食事を少量ずつ提供し、必要に応じて栄養補助食品を検討する。排便後は温水洗浄と乾燥を行い、保護剤を塗布して肛門周囲の皮膚ケアを行う。感染拡大防止のため、個室管理、手袋・ガウン着用、次亜塩素酸ナトリウムによる環境消毒を徹底する。EP(指導計画):患者と家族に疾患の概要、感染経路、手洗いの重要性、治療薬の服用方法、再発時の症状と対処法について説明する。食事内容や水分摂取の工夫について指導する。肛門周囲の清潔保持と皮膚保護の方法を指導する。退院後の感染予防策について説明する。