疾患の概要
白内障は、眼球内の水晶体が混濁し、視力が低下する疾患です。水晶体はカメラのレンズのような役割を果たし、光を網膜に集める働きがありますが、混濁することで光が十分に透過せず、物がかすんで見えたり、まぶしく感じたりします。病態生理としては、加齢に伴う水晶体タンパク質の変性・凝集が主な原因で、加齢性白内障が最も一般的です。その他、糖尿病などの全身疾患、ステロイドなどの薬剤、外傷、アトピー性皮膚炎、先天性などが原因となることもあります。主な症状は、視力低下(特に遠方視力の低下)、霧視(かすみ目)、羞明(まぶしさ)、物が二重に見える(単眼性複視)、色の識別能力の低下などです。進行すると日常生活に支障をきたします。検査は、視力検査、細隙灯顕微鏡検査(水晶体の混濁の程度や部位の確認)、眼底検査(他の眼疾患の有無の確認)、眼圧検査などが行われます。治療は、初期段階では点眼薬で進行を遅らせることもありますが、根本的な治療は手術です。手術では、混濁した水晶体を超音波で砕いて吸引し、人工の眼内レンズを挿入します。手術は局所麻酔で行われ、多くの場合、日帰りまたは短期入院で実施されます。術後は視力の回復が期待できますが、合併症(後発白内障、眼内炎など)のリスクもゼロではありません。
看護のポイント
白内障患者の看護では、視力低下による日常生活への影響を理解し、安全と安楽の確保が重要です。術前は、疾患や手術に関する不安の軽減に努めます。手術の必要性、術式、合併症、術後の生活制限(洗顔、入浴、運動など)について、患者が理解できるよう、医師の説明を補足し、疑問点に答えます。点眼薬の使用方法(回数、順番、清潔操作)を具体的に指導し、理解度を確認します。術後は、感染予防と眼圧上昇予防が最重要です。指示された点眼薬の正確な使用、保護眼鏡や眼帯の装着、洗顔・洗髪・入浴・運動などの制限事項の遵守を徹底指導します。特に、目をこすらない、ぶつけないなどの注意を促します。術後の視力回復には個人差があること、後発白内障の可能性についても説明し、定期的な受診の重要性を伝えます。退院後の生活環境の調整(段差の解消、照明の工夫など)や、家族への指導も行い、患者が安心して日常生活を送れるよう支援します。視力低下による転倒リスクや、精神的ストレスにも配慮し、必要に応じて社会資源の活用を提案します。
アセスメントのポイント
白内障患者のアセスメントでは、視力低下が日常生活に与える影響を多角的に評価します。フィジカルアセスメントでは、まず視力検査(矯正視力を含む)を行い、視力低下の程度を確認します。細隙灯顕微鏡検査の結果から、水晶体の混濁の部位や程度を把握します。羞明の有無、霧視の程度、単眼性複視の有無、色の識別能力の変化など、自覚症状の詳細を聴取します。特に、夜間の運転や階段の昇降、読書など、具体的な日常生活動作における困りごとを明確にします。眼圧検査の結果は、緑内障の合併や術後の眼圧上昇のリスク評価に重要です。術前検査として、血液検査、心電図、胸部X線検査などが行われ、全身状態を評価します。術後は、眼痛、充血、視力低下、異物感、眼脂の有無など、合併症を示唆する症状の有無を観察します。瞳孔の形や対光反射、眼球運動なども確認します。患者の理解度や不安の程度、家族のサポート体制もアセスメントし、個別性のある看護計画立案に繋げます。
関連する看護診断
1. 視力障害に関連した転倒リスク:視力低下により、周囲の状況を正確に認識できず、転倒の危険性が高まるため。
2. 視力低下に関連したセルフケア不足:視力低下により、日常生活動作(食事、入浴、整容など)の遂行が困難になるため。
3. 手術および予後に関連した不安:手術に対する恐怖や、術後の視力回復への期待と不安、合併症への懸念があるため。
4. 視力低下に関連した活動耐性低下:視力低下により、外出や趣味活動が制限され、活動量が減少するため。
5. 術後合併症(感染、眼圧上昇など)の可能性に関連した知識不足:術後のケアや生活制限、異常の早期発見に関する知識が不足しているため。
看護計画の要約
OP (観察項目): 術前の視力、自覚症状(霧視、羞明、複視など)、日常生活への影響度、不安の程度、点眼薬の使用状況、全身状態(既往歴、内服薬、アレルギー)。術後は、視力、眼痛、充血、眼脂、異物感、眼圧、瞳孔の状態、保護眼鏡/眼帯の装着状況、指示された点眼薬の実施状況、全身状態(発熱、気分不快など)、合併症の兆候(急激な視力低下、眼痛増強など)。
TP (援助項目): 術前は、手術に関する情報提供と不安の傾聴、点眼薬の正確な使用方法指導、転倒予防のための環境調整。術後は、指示された点眼薬の確実な実施、保護眼鏡/眼帯の正しい装着指導、安静保持と生活制限の指導、必要に応じたADL援助、清潔ケアの援助、異常の早期発見と報告。
EP (患者教育): 術前は、疾患の病態、手術の目的と内容、合併症のリスク、術後の生活制限、点眼薬の正しい使用方法、不安軽減のための情報提供。術後は、退院後の点眼薬の継続、保護眼鏡の着用、洗顔・洗髪・入浴・運動などの制限事項、異常時の連絡先と受診の目安、定期的な眼科受診の重要性、転倒予防のための環境整備、社会資源の活用方法。