疾患の概要
熱傷(やけど)は、熱源(熱湯、炎、電気、化学物質など)に接触することで皮膚組織が損傷を受ける状態です。損傷の深さによりI度(表皮のみ)、II度(表皮と真皮)、III度(真皮全層から皮下組織)に分類され、II度はさらに浅達性II度と深達性II度に分けられます。I度は発赤と疼痛が主で、水疱形成はありません。浅達性II度は強い疼痛、発赤、水疱形成が特徴で、治癒は比較的良好です。深達性II度は疼痛が鈍くなり、水疱は破れやすく、皮膚は白っぽくなります。III度は神経末端が破壊されるため疼痛がなく、皮膚は白または黒褐色で硬くなります。広範囲の熱傷では、血管透過性の亢進により体液が血管外に漏出し、循環血液量減少性ショック(熱傷性ショック)を引き起こす可能性があります。また、感染症、電解質異常、腎不全、多臓器不全などの合併症のリスクも高まります。診断は、熱傷の原因、範囲(9の法則やLund-Browder図)、深さの評価が重要です。治療は、熱傷の冷却(流水で15~30分)、創部の保護、疼痛管理、輸液療法(広範囲熱傷の場合)、感染予防、必要に応じて外科的処置(デブリードマン、植皮)が行われます。化学熱傷の場合は、原因物質の除去と大量の洗浄が最優先されます。
看護のポイント
熱傷の看護では、まず受傷直後の応急処置が重要です。熱源からの隔離、冷却、清潔な布で創部を保護します。広範囲熱傷では、ショック徴候(意識レベル、血圧、脈拍、尿量)の観察と輸液管理が生命維持に直結します。疼痛は患者にとって大きな苦痛であるため、鎮痛剤の適切な使用と非薬物療法(体位調整、声かけ)を組み合わせた疼痛管理が不可欠です。創部ケアでは、感染予防のため清潔操作を徹底し、創部の状態(発赤、腫脹、浸出液、壊死組織)を毎日観察します。ドレッシング材の選択と交換、皮膚の保護に努めます。栄養状態は治癒に大きく影響するため、高カロリー・高タンパク食の摂取を促し、必要に応じて経腸栄養や静脈栄養を検討します。患者教育では、創部の正しいケア方法、感染徴候、疼痛管理、リハビリテーションの重要性を説明し、退院後の生活指導を行います。精神的サポートも重要であり、熱傷による身体的変化や機能障害に対する不安や抑うつ感情に寄り添い、心理的ケアを提供します。
アセスメントのポイント
フィジカルアセスメントでは、まずABC(気道、呼吸、循環)の確保を最優先します。気道熱傷の兆候(顔面熱傷、鼻毛の焦げ、嗄声、口腔内の発赤・浮腫)があれば、気道確保の準備が必要です。次に熱傷の深さ、範囲、部位を詳細に評価します。特に顔面、手足、関節、会陰部の熱傷は機能障害のリスクが高いため注意します。全身状態として、バイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸数、体温)、意識レベル、皮膚の色調・湿潤度、毛細血管再充満時間、尿量を継続的に観察し、ショックの兆候を見逃さないようにします。疼痛の程度と性質もアセスメントし、適切な鎮痛方法を検討します。検査データでは、血液検査(血算、電解質、腎機能、肝機能、CRP)、尿検査、血液ガス分析などを確認します。特にヘマトクリット値の上昇は血管外への体液漏出を示唆し、電解質異常(高カリウム血症など)は腎機能障害や細胞破壊を反映することがあります。また、感染の早期発見のため、白血球数やCRPの推移を追います。
関連する看護診断
1. 体液量減少のリスク: 広範囲熱傷による血管透過性亢進と体液喪失のため。
2. 感染のリスク: 皮膚のバリア機能障害、壊死組織の存在、免疫機能低下のため。
3. 急性疼痛: 熱傷による神経終末の刺激、創部処置、炎症反応のため。
4. 身体イメージの混乱: 熱傷による外見の変化、機能障害、長期的な治療過程のため。
5. 身体可動性障害: 熱傷部位の疼痛、浮腫、拘縮、創部治癒過程のため。
看護計画の要約
OP: バイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸数、体温)の継続的観察。意識レベル、尿量、皮膚の色調・湿潤度の観察。熱傷創部の状態(深さ、範囲、発赤、腫脹、浸出液、壊死組織、感染徴候)の観察。疼痛の程度と性質の評価。血液検査データ(血算、電解質、CRPなど)の確認。呼吸状態(嗄声、呼吸困難、SpO2)の観察。
TP: 医師の指示に基づく輸液管理と輸液量の調整。疼痛管理(鎮痛剤の投与、体位調整、クーリング)。熱傷創部の清潔保持とドレッシング材交換。デブリードマンや植皮術前後のケア。感染予防策の実施(手洗い、PPEの使用、清潔操作)。栄養サポート(高カロリー・高タンパク食の提供、経腸栄養・静脈栄養の管理)。リハビリテーションの早期開始(関節可動域訓練、ポジショニング)。
EP: 患者・家族への熱傷の病態、治療の必要性、合併症のリスクについての説明。疼痛管理の方法と重要性の指導。創部ケアの方法(洗浄、軟膏塗布、ドレッシング材交換)の指導。感染徴候とその対処法の教育。栄養摂取の重要性と食事内容に関する指導。リハビリテーションの必要性と自宅での継続方法の指導。精神的サポートと社会資源の紹介。