疾患一覧に戻る
❤️循環器

心房細動

しんぼうさいどう

心房が不規則に興奮し、脈が乱れる不整脈

心房細動看護不整脈抗凝固療法

疾患の概要

心房細動(AF)は、心房内で電気的興奮が不規則かつ高速に発生し、心房が有効な収縮を行えなくなる不整脈です。通常、心房は規則的に収縮して心室へ血液を送り出しますが、心房細動では心房が細かく震える(細動)状態となり、心室への血液流入が不規則になります。これにより、心拍数も不規則かつ速くなり、心臓のポンプ機能が低下する可能性があります。病態生理としては、心房内の複数のリエントリー回路や異所性自動能の亢進が原因とされています。主な原因は、高齢化、高血圧、糖尿病、心臓弁膜症、虚血性心疾患、甲状腺機能亢進症、慢性腎臓病、睡眠時無呼吸症候群、過度の飲酒など多岐にわたります。症状は無症状から、動悸、息切れ、胸部不快感、めまい、倦怠感など様々です。特に重要な合併症は脳梗塞であり、心房内で血液が淀むことにより血栓が形成されやすくなり、それが脳に飛んで脳梗塞を引き起こすリスクが高まります。検査は、心電図(特に24時間ホルター心電図)、心臓超音波検査、血液検査(甲状腺機能、腎機能、電解質など)が中心となります。治療は、心拍数コントロール(β遮断薬、Ca拮抗薬)、リズムコントロール(抗不整脈薬、カテーテルアブレーション)、血栓塞栓症予防(抗凝固薬)が三本柱となります。患者の状態やリスクに応じて、これらの治療法が選択・組み合わされます。

看護のポイント

心房細動の看護では、患者さんの症状緩和と合併症予防が重要です。まず、動悸、息切れ、胸部不快感、めまい、倦怠感などの症状の有無と程度を継続的に観察し、心拍数とリズムの変動に注意します。特に、不規則な脈拍は心房細動の兆候であるため、触診による脈拍確認は必須です。ケアの実際としては、症状が強い場合は安静を促し、呼吸困難がある場合は体位変換や酸素吸入を検討します。抗凝固薬を服用している患者さんには、出血傾向(歯肉出血、鼻出血、皮下出血、黒色便など)がないか観察し、転倒予防などの安全対策を徹底します。また、薬物療法のアドヒアランス向上が重要であり、抗不整脈薬や抗凝固薬の正しい服用方法、副作用について丁寧に説明します。患者教育では、心房細動の病態、治療の目的(特に脳梗塞予防の重要性)、服薬の必要性、日常生活での注意点(飲酒制限、禁煙、ストレス管理、適度な運動)、症状悪化時の対処法などを指導します。自己管理能力を高めるために、脈拍の自己測定方法や症状記録の重要性も伝えます。

アセスメントのポイント

フィジカルアセスメントでは、まず意識レベル、顔色、呼吸状態(呼吸数、努力呼吸の有無)、チアノーゼの有無を確認します。心臓の聴診では、心音の不規則性や心雑音の有無を評価します。特に重要なのは、脈拍の触診と聴診による心拍数の確認です。心房細動では脈拍が不規則で、脈拍欠損(心臓は収縮しているが末梢の脈として触れない)が生じることがあるため、心尖部聴診と橈骨動脈触診の両方で脈拍数を測定し、脈拍欠損の有無を確認します。血圧測定も重要であり、心拍数の変動による血圧の不安定性に注意します。浮腫の有無、頸静脈の怒張など、心不全徴候も観察します。検査データでは、心電図所見(P波の消失、f波の出現、RR間隔の不規則性)を確認します。血液検査では、電解質(特にK+、Mg2+)、甲状腺機能(TSH、FT3、FT4)、腎機能(BUN、Cr)、肝機能(AST、ALT)などを確認し、治療薬選択や副作用評価に役立てます。抗凝固療法中の患者では、PT-INRやAPTTなどの凝固能データを定期的に確認し、治療域内にあるか、出血リスクが高まっていないかを評価します。

関連する看護診断

1. 心拍出量減少のリスク状態:心房の不規則な収縮と心拍数の変動により、心臓のポンプ機能が低下する可能性があるため。 2. 活動耐性低下:動悸、息切れ、倦怠感などの症状により、日常生活活動が制限される可能性があるため。 3. 出血のリスク状態:抗凝固薬の服用により、出血傾向が高まるため。 4. 不安:疾患の診断、症状、治療、合併症への懸念により、精神的苦痛を抱えるため。 5. 知識不足:疾患の病態、治療、服薬管理、日常生活での注意点、合併症予防に関する情報が不足しているため。

看護計画の要約

【OP】心拍数・リズム(心電図、脈拍触診・聴診)、血圧、呼吸状態、意識レベル、動悸・息切れ・胸部不快感・めまい・倦怠感などの症状の有無と程度、浮腫の有無、尿量、皮膚色、出血徴候(歯肉出血、鼻出血、皮下出血、黒色便など)、検査データ(心電図、電解質、腎機能、肝機能、PT-INRなど)、服薬状況と副作用の有無を観察する。【TP】症状が強い場合は安静を促し、安楽な体位を保持する。医師の指示に基づき、酸素吸入や薬剤投与(抗不整脈薬、抗凝固薬)を行う。抗凝固薬服用患者には、転倒予防や外傷予防のための環境整備を行う。出血徴候出現時は速やかに医師へ報告し、適切な処置を講じる。不安軽減のため、傾聴し、安心できる環境を提供する。【EP】心房細動の病態、治療の目的(特に脳梗塞予防の重要性)、処方薬の作用・副作用・正しい服用方法、脈拍の自己測定方法、日常生活での注意点(禁煙、節酒、ストレス管理、適度な運動、規則正しい生活)、症状悪化時の対処法、定期受診の重要性について指導する。出血リスクのある行動(激しい運動、カミソリ使用など)や、出血徴候出現時の対応について具体的に説明する。質問しやすい雰囲気を作り、患者の理解度を確認しながら個別性のある教育を行う。