疾患の概要
気管支喘息は、気道に慢性的な炎症が生じ、様々な刺激に対して気道が過敏に反応し、発作的に気道が狭くなる疾患です。病態生理としては、アレルゲンやウイルス感染、冷気、運動、ストレスなどが引き金となり、気道の平滑筋が収縮し、気道粘膜が浮腫を起こし、粘液の分泌が増加します。これにより気道内腔が狭窄し、呼吸困難や喘鳴といった症状が出現します。主な原因はアレルギー体質(アトピー型)と非アレルギー性(非アトピー型)に分けられますが、多くは複合的な要因が関与します。アトピー型ではダニ、ハウスダスト、花粉、ペットのフケなどがアレルゲンとなります。主な症状は、発作性の呼吸困難、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音)、咳、痰です。特に夜間から明け方にかけて症状が悪化しやすい特徴があります。重症化するとチアノーゼや意識障害を伴うこともあります。検査では、呼吸機能検査(スパイロメトリーによるFEV1の低下、気道可逆性試験)、気道過敏性試験、アレルギー検査(IgE値、特異的IgE抗体検査)、喀痰検査(好酸球の確認)などが行われます。治療は、発作を予防するための長期管理薬(吸入ステロイド薬、長時間作用型β2刺激薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬など)と、発作時に症状を緩和するための発作治療薬(短時間作用型β2刺激薬など)を組み合わせます。重症発作時にはステロイドの全身投与や酸素療法、気管支拡張薬の吸入などが行われます。
看護のポイント
看護のポイントは、患者が安心して療養できる環境を整え、発作の予防と早期対応を支援することです。観察項目としては、呼吸状態(呼吸数、呼吸様式、喘鳴の有無、チアノーゼの有無)、SpO2値、意識レベル、発汗の有無、痰の量と性状、心拍数、血圧などを継続的に観察します。特に喘鳴の有無や強さ、呼気延長の程度は重要です。ケアの実際では、発作時は患者を安楽な体位(半坐位など)にし、衣服を緩めて呼吸を楽にします。医師の指示に基づき酸素投与や吸入療法を適切に行い、効果と副作用を観察します。精神的な不安を軽減するため、声かけや寄り添う姿勢も重要です。患者教育としては、疾患の理解を深めてもらい、発作の誘因を避けるための環境整備(掃除、禁煙、ペット対策など)を指導します。吸入薬の正しい使用方法を繰り返し指導し、セルフモニタリング(ピークフローメーターの使用)の重要性を伝えます。発作時の対処法(発作治療薬の使用タイミング、医療機関受診の目安)を具体的に説明し、喘息手帳の活用を促します。定期的な受診の必要性や、症状がなくても自己判断で薬を中断しないよう指導します。
アセスメントのポイント
フィジカルアセスメントでは、まず視診で呼吸困難の程度(努力呼吸、陥没呼吸、肩呼吸、口すぼめ呼吸など)、チアノーゼの有無、意識レベル、発汗の有無を確認します。聴診では、呼気延長や喘鳴(特に呼気性喘鳴)、減弱した呼吸音の有無を聴取します。打診では、過膨張による鼓音を認めることがあります。触診では、呼吸補助筋の使用状況や、胸郭の動きを確認します。検査データでは、血液検査で好酸球数やIgE値の上昇、CRPの上昇(感染合併時)を確認します。動脈血ガス分析では、PaO2の低下、PaCO2の上昇(重症発作時)、pHの低下(アシドーシス)に注意します。呼吸機能検査(スパイロメトリー)では、1秒量(FEV1)の低下やFEV1/FVC比の低下、気道可逆性試験での改善度を確認します。パルスオキシメトリーではSpO2値の低下を継続的にモニタリングします。胸部X線検査では、肺の過膨張や肺炎などの合併症の有無を確認します。これらの情報を総合的に判断し、患者の呼吸状態や重症度を評価します。
関連する看護診断
1. ガス交換障害:気道狭窄と気道分泌物増加による換気血流比不均衡に関連したガス交換障害。
2. 非効果的気道浄化:気道狭窄、気道分泌物増加、気管支平滑筋収縮に関連した非効果的気道浄化。
3. 活動耐性低下:呼吸困難と酸素供給量減少に関連した活動耐性低下。
4. 不安:呼吸困難感、発作への恐怖、疾患の慢性経過に関連した不安。
5. 知識不足:疾患の管理方法、誘因の回避、薬物療法に関する知識不足。
看護計画の要約
【OP】呼吸状態(呼吸数、呼吸様式、喘鳴、チアノーゼ、SpO2)の観察、意識レベル、心拍数、血圧のモニタリング。痰の量と性状、発汗の有無、呼吸補助筋の使用状況の確認。検査データ(動脈血ガス、血液検査、呼吸機能検査)の確認。吸入薬の効果と副作用の観察。【TP】安楽な体位の保持(半坐位など)。医師の指示に基づく酸素投与、吸入療法、薬剤投与の実施と効果・副作用の観察。環境整備(室温・湿度調整、アレルゲン除去、禁煙指導)。精神的サポートと不安の軽減。口腔ケアの実施(吸入ステロイド使用後)。【EP】疾患の病態、誘因、症状、治療薬(長期管理薬と発作治療薬)についての教育。吸入薬の正しい使用方法の指導と確認。ピークフローメーターを用いたセルフモニタリングの指導。発作時の対処法と医療機関受診の目安の指導。喘息手帳の活用指導。禁煙指導、アレルゲン回避の具体的方法の指導。定期受診の重要性の説明。ストレス管理や適度な運動に関する情報提供。