疾患の概要
誤嚥性肺炎は、唾液、食物、胃内容物などが気道に誤って侵入し、肺に炎症を起こす疾患です。特に高齢者や神経疾患を持つ患者に多く見られます。病態生理としては、誤嚥された異物が気管支や肺胞に到達し、細菌感染を引き起こすことで炎症反応が生じます。原因としては、嚥下機能の低下(加齢、脳卒中、パーキンソン病など)、意識レベルの低下(鎮静剤使用、認知症など)、口腔衛生状態の不良、胃食道逆流症などが挙げられます。主な症状は、発熱、咳、痰(特に膿性痰)、呼吸困難、胸痛、倦怠感などです。高齢者では、症状が非典型的で、食欲不振、活動性の低下、意識障害のみの場合もあります。検査では、胸部X線やCTで肺炎像を確認し、血液検査で炎症反応(CRP、白血球数)を評価します。嚥下機能評価として嚥下造影検査(VF)や内視鏡検査(VE)が行われることもあります。治療は、抗菌薬投与が中心で、原因菌に合わせた適切な抗菌薬を選択します。また、誤嚥を予防するための嚥下リハビリテーション、口腔ケア、体位調整、食事形態の調整などが重要です。重症例では、酸素療法や人工呼吸器管理が必要となることもあります。
看護のポイント
誤嚥性肺炎の看護では、まず誤嚥の予防が最重要です。食事介助時は、患者の覚醒レベル、嚥下状態を常に確認し、適切な体位(30〜60度ギャッチアップ、頸部軽度前屈位)を保持します。食事形態は、嚥下機能に合わせたもの(とろみ食、ゼリー食など)を選択し、一口量を少なく、ゆっくりと摂取を促します。食後は、胃内容物の逆流を防ぐため、30分〜1時間程度ギャッチアップ位を維持します。口腔ケアは、食前・食後に徹底して行い、口腔内の細菌数を減少させることが肺炎予防に繋がります。特に義歯の清掃も重要です。発熱、咳、痰などの呼吸器症状の観察に加え、呼吸回数、呼吸様式、SpO2、チアノーゼの有無など、呼吸状態の継続的なモニタリングが必要です。脱水予防のため、水分摂取を促しますが、誤嚥リスクがある場合は、医師や言語聴覚士と相談し、適切な水分補給方法を検討します。患者教育としては、誤嚥のリスク因子、予防策(食事姿勢、口腔ケアの重要性)、症状悪化時の対応について、患者本人や家族に説明し、理解と協力を促します。
アセスメントのポイント
フィジカルアセスメントでは、まず意識レベル、顔色、呼吸状態(呼吸回数、深さ、努力呼吸の有無、SpO2)を観察します。聴診では、肺野のラ音(捻髪音、水泡音)の有無を確認します。発熱の有無、咳の性状(乾性、湿性)、痰の量、色、粘稠度、臭いを詳細に観察します。嚥下機能評価として、食事中のむせ、咳き込み、声の変化(湿性嗄声)、嚥下後の残渣感の有無を確認します。口腔内は、乾燥、舌苔、歯肉炎、虫歯、義歯の状態、口腔内の清潔度を評価します。検査データでは、血液検査で白血球数、CRP、プロカルシトニンなどの炎症マーカーの推移を追います。動脈血液ガス分析では、PaO2、PaCO2、pHを確認し、呼吸不全の有無や程度を評価します。胸部X線やCT画像では、肺炎の部位、広がり、浸潤影の有無、胸水の有無を確認します。嚥下造影検査(VF)や嚥下内視鏡検査(VE)の結果から、誤嚥の原因や嚥下機能の具体的な障害を把握します。
関連する看護診断
1. 気道浄化の非効果的:誤嚥による分泌物増加と嚥下機能低下に関連して。
2. 栄養摂取不足:嚥下困難と食欲不振に関連して。
3. 誤嚥のリスク:嚥下機能低下、意識レベルの低下、口腔衛生状態の不良に関連して。
4. ガス交換障害:肺胞-毛細血管膜の換気・血流不均衡、気道分泌物貯留に関連して。
看護計画の要約
OP: 呼吸状態(呼吸数、SpO2、呼吸音、痰の性状)を継続的に観察する。発熱の有無、意識レベル、嚥下状態(むせ、咳き込み)を観察する。口腔内状態(乾燥、舌苔、清潔度)を毎日評価する。血液検査データ(CRP、白血球)の推移を確認する。TP: 医師の指示に基づき抗菌薬を正確に投与する。嚥下機能に応じた食事形態を提供し、適切な食事介助を行う。食前・食後に丁寧な口腔ケアを実施する。体位ドレナージやスクイージングなどを用いて、効果的な排痰を促す。必要に応じて酸素療法を実施する。EP: 患者と家族に誤嚥性肺炎の病態、誤嚥予防の重要性、口腔ケアの方法について説明する。嚥下体操や嚥下リハビリテーションの必要性を伝え、自主的な実施を促す。症状悪化時の兆候(発熱、呼吸困難、むせの増加)と受診の目安を指導する。退院後の食事形態や食事時の注意点について指導する。