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🫁呼吸器

ARDS(急性呼吸窮迫症候群)

えーあーるでぃーえす

重症の肺障害により急性の呼吸不全を起こす症候群

ARDS看護人工呼吸器ICU

疾患の概要

ARDS(急性呼吸窮迫症候群)は、重症な基礎疾患(敗血症、肺炎、重症外傷、膵炎など)に続発して、肺に広範な炎症と非心原性の肺水腫が生じ、重度の低酸素血症と呼吸不全を呈する症候群です。病態生理としては、肺胞上皮細胞や肺毛細血管内皮細胞の障害により、血管透過性が亢進し、肺胞内にタンパク質に富んだ液体が漏出します。これにより、肺サーファクタントの機能不全、肺胞虚脱、換気血流不均衡が生じ、ガス交換が著しく障害されます。主な症状は、基礎疾患の治療にもかかわらず進行する呼吸困難、頻呼吸、チアノーゼ、低酸素血症です。検査では、胸部X線やCTで両側性の浸潤影が認められ、血液ガス分析でPaO2/FiO2比が300mmHg以下(軽症)から100mmHg以下(重症)に低下していることが診断基準となります。治療の中心は、原因疾患の治療と、肺保護戦略に基づいた人工呼吸管理(低一回換気量、PEEP設定、プラトー圧管理)です。必要に応じて、体位変換(腹臥位療法)、筋弛緩薬、ECMO(体外式膜型人工肺)なども検討されます。

看護のポイント

ARDS患者の看護は、重篤な状態であるため、全身管理と合併症予防が重要です。観察項目としては、呼吸状態(呼吸数、努力呼吸の有無、SpO2、PaO2/FiO2比)、循環動態(血圧、心拍数、尿量)、意識レベル、体温、人工呼吸器の設定とアラーム、鎮静・鎮痛レベル、皮膚状態(褥瘡、浮腫)などがあります。ケアの実際では、人工呼吸器管理下の患者に対し、気道確保(気管吸引、カフ圧管理)、適切な体位変換(腹臥位療法中の体位管理、眼の保護)、口腔ケア、早期離床に向けたリハビリテーション、栄養管理(経腸栄養の早期開始)、感染予防(手洗い、カテーテル管理)を徹底します。また、鎮静・鎮痛薬の適切な管理と、せん妄の予防・早期発見も重要です。患者教育は、患者自身が重篤な状態にあるため、家族への情報提供と精神的サポートが中心となります。病状の説明、治療方針、人工呼吸器の必要性、面会の調整などを丁寧に行い、不安の軽減に努めます。

アセスメントのポイント

ARDSのアセスメントでは、フィジカルアセスメントと検査データの両面から包括的に評価します。フィジカルアセスメントでは、まず呼吸器系に注目し、呼吸回数、呼吸パターン(浅速呼吸、努力呼吸)、呼吸補助筋の使用の有無、チアノーゼの有無、聴診による呼吸音(気管支呼吸音、湿性ラ音など)を確認します。循環器系では、心拍数、血圧、末梢循環(皮膚温、毛細血管再充満時間)、尿量を評価し、ショックの兆候を見逃さないようにします。神経系では、意識レベル(JCS, GCS)、瞳孔所見、鎮静・鎮痛レベルを評価します。検査データでは、血液ガス分析(PaO2/FiO2比、pH、PaCO2、HCO3-)、胸部X線・CT画像(両側性浸潤影、肺水腫の程度)、血算(白血球数、ヘモグロビン)、炎症反応(CRP、プロカルシトニン)、肝機能・腎機能、電解質、心電図などを確認します。これらの情報から、ARDSの重症度、治療反応性、合併症の有無を総合的に判断します。

関連する看護診断

1. ガス交換障害: 肺胞-毛細血管膜の損傷と肺水腫による換気血流不均衡のため。 2. 非効果的気道浄化: 肺水腫と炎症による分泌物増加、咳嗽反射の低下、人工呼吸器管理のため。 3. 呼吸パターン非効果的: 肺コンプライアンスの低下、呼吸筋疲労、人工呼吸器管理のため。 4. 栄養摂取量不足: 疾患の重症度、代謝亢進、意識レベルの低下、経口摂取困難のため。 5. 感染リスク状態: 侵襲的処置(人工呼吸器、中心静脈カテーテル)、免疫能の低下、臥床状態のため。

看護計画の要約

【OP(観察計画)】呼吸状態(SpO2、呼吸数、努力呼吸、PaO2/FiO2比、人工呼吸器設定とアラーム)、循環動態(血圧、心拍数、尿量)、意識レベル、体温、鎮静・鎮痛レベル、胸部X線・CT画像、血液ガス分析、電解質、炎症反応、喀痰の性状と量、皮膚状態(褥瘡、浮腫)を継続的に観察する。人工呼吸器関連肺炎(VAP)やカテーテル関連血流感染症(CRBSI)の兆候を早期に発見する。【TP(援助計画)】医師の指示に基づき、肺保護戦略に沿った人工呼吸器管理を適切に行う。気道確保(気管吸引、カフ圧管理)、体位変換(腹臥位療法を含む)、口腔ケア、早期離床に向けたリハビリテーションを計画的に実施する。適切な鎮静・鎮痛薬の管理と、せん妄予防策を講じる。感染予防策(手洗い、清潔操作)を徹底する。経腸栄養を早期に開始し、栄養状態を維持・改善する。必要に応じて、体温管理や輸液管理を行う。【EP(教育計画)】患者家族に対し、ARDSの病状、治療内容、人工呼吸器の必要性、合併症のリスクについて分かりやすく説明し、不安の軽減を図る。面会時の注意点や感染予防策について指導する。患者の回復段階に応じて、リハビリテーションの重要性や退院後の生活について情報提供を行う。